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未来へのプレリュード
いつも通りであれば。―2

一つは、翠がいつも以上に緊張していること。
…『いつも通り』と意識し過ぎて、『いつも通り』が解らなくなってしまったのだ。

二つ目の理由は…カロレスだ。
普段カロレスは翠達と話す際、常に笑顔を絶やさない。
翠との会話の場合、赤面する翠に微笑むのが常だった。
それが、今は…。

(……カロレス、全然笑えてない)
本人は笑っているつもりなのだろう。翠に気を遣わせまいとしているのだろう。
しかし、実際には全く笑えていなかった。

それは、付き合いの無い人間には見抜けない違い。
だが、四年間共に暮らしてきた翠達なら容易に気が付く違いだった。

「…。あの、カロレス…」
「翠。カロレス」
翠のか細い声は、ふっと掻き消されてしまう。
リビングの方から夜宵がやってきたのだ。

「どうした?」
「リビングに来て下さい。話は其処で」
言って、さっさと戻って行く。

「……それじゃあ、翠。行こうか」
カロレスが翠に背を向け、歩き出してしまう。
その背をゆっくりと追いかけながら、翠は想う。

…もし、普段のカロレスであれば。

『さっき何を言いかけたんだ?聞かせて欲しいな』
…そう言って、翠が言うまでずっと待ってくれた。

『それじゃあ翠、行こうか』
…そう言って、一緒に歩いてくれた。

……優しい笑顔を浮かべながら。

「…カロレス……」

カロレスが、どんどん遠くなっていく気がした……。




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あきゅろす。
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