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未来へのプレリュード
いつも通りであれば。


父との長い電話を終え、受話器を置く。
翠はふぅと息を吐いた。
(いつも通り…いつも通り)
先程のやり取りを反芻し、呪文のように唱える。
…と、そんな翠の背後に…。

「翠。翠のお父さん、元気だったか?」
「きゃあっ?!…かっ、カロレス?」
突然現れたカロレスに驚き、思わず悲鳴を上げてしまった。
振り向き、バクバクと脈打つ心臓を落ち着かせる。
「…驚かせちゃったみたいだな。ごめん」
「う…ううん。いいの、そんな……」

…不味い。
言葉が、全く出て来ない。
普段からカロレスを前にすると緊張してどもったりしていたが、それでも頭の中には言いたい言葉が有った。

…今は、何も出て来ない。
頭の中が空っぽになってしまっている。

「……あ!…お、お父様ね、元気だったわ、相変わらず」
「…そっか。それなら、良かった」
本当は挨拶したかったんだけどな。電話してるのに気付くのが遅かったよ。
そう言って笑うカロレスに…違和感を感じた。

「…ねえカロレス。…その、体調はどう?」
「ああ、もう大丈夫だよ。…皆に迷惑掛けちゃったよな。…ごめん、翠」
「そっ、そんな…迷惑だなんて思ってないわ…!」
いつも以上にぎこちない会話。
その理由は二つ有った。



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