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小説〔短編集〕
アドエイクの旅 〜 海にやってきました。
「青い!!広い!!静かだぁぁぁぁ!!!」
ここは山の頂上である。アドエイクは山登りの山頂に着いた喜びから、そう叫んでいた。
ぽんぽん、とアドエイクの肩がつつかれる。振り向くとおじいさんが立っていた。
「ここは山じゃよ」
「わかっていますよ、佐々木さん」
「なのにそのようなこと・・・まるで海にでも来たかのようじゃった。あと、わしは佐々木じゃないわさ」
アドエイクは向き直って首を横に振った。
「佐々木さん、常識に囚われてちゃいけない」
おじいさんは不思議そうに首を傾げる。
「・・・というと?あと、わしは佐々木じゃない」
「見えませぬか?目の前に広がる、藍深き、高き空を!!」
「おお、確かに見えるぞと」

錯覚か。一瞬、彼らを神的な何かが包んでいるように見えた。
けれども、それはまた別のお話。

「佐々木さん。今日はありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ。楽しかった。あと、わしは佐々木じゃないよ」
「また、どこかでお会いできれば・・・その時は、もっともっと、いろんな話を聞かせてください」
「ああ、元気でな。また会おう」
手を振って二人は別れた。"この出会いは、別れは、決して無駄なものではない。"アドエイクは、しっかりと声に出して記憶した。
私たちの存在が続く限り、私たちはまた出会うことができる。アドエイクは、下山途中に滑って転がり落ちた。
しかし、それはまた別のお話。



「俺が"海に行くこと"によって、"今日の晩御飯が調達できる"かもしれない」
アドエイクは海に行くことに決めた。

歩くこと3時間。未だ海は見えず。
男の疲労も募るばかりである。このままでは晩御飯調達の前に力尽きてしまいかねない。
それだけは避けなければ-----
「一体、海は何処だ・・・北の方に歩けば着くはずなのだが」
歩けども、歩けども、視界にはビルの海。果たして、本当に海は存在するのだろうか?
「ある。海は、在る!!」
両手を広げて叫ぶ。アドエイクは、神々しい光に包まれた、錯覚を覚えた。
「俺の祖父が言っていたんだ!"海は存在する"と!!・・・見える、見えるぞぉっ!辺り一面に広がる水の世界が!!」
その後、アドエイクが不審者として刑務所に連行されたのは別の話である。


なんとか誤解を解き、風を追い越さんと走っている青年がいる。そう、アドエイクである。
彼は、己が野望のため海を目指している。
「いざ、倒れ逝くその時まで!!」
しかし、沈む夕日は彼を嘲笑うかのようにその速度を次第にあげているように見えた。
ああ、陽が沈む。待ってくれ、私はまだ友との約束を果たしてはいない。
コンビニの前に不良の溜りがあればその中に突っ込み袋叩きに遭い、眼前に狂犬が横切ろうとも構わず吹っ飛ばし危うく晩御飯になりかけた。
それでも尚、彼は走り続けている。
何の為に走るのか?理由さえも既に忘れた。ただ、走るのだ。
その先には、夢の楽園が・・・きっとある!!

-おわれ-

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あきゅろす。
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