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小説〔短編集〕
短編小説「節分」
「鬼は外、福は内」

節分。日本の伝統行事のひとつだが、私はその詳細をよく知らない。2月3日になると「鬼は外、福は内」と言って豆を投げる。幼い頃は意味もわからず、鬼の面をつけた兄に向かって容赦なく、抱えた豆の入った箱が空になるまで力一杯投げ続けていた。今になって考えてみるが、ますます意味がわからない。「なぜ、鬼が除け者にされているのか」
「厄を祓い、福を招くための行事だ」と聞いたが、私には鬼が厄の象徴だとは思えない。そもそも「鬼」という存在についてすらよくわかってないのだけど。
「人が生み出した架空の存在で、人に忌み嫌われている」そのように解釈している。
なぜ?これだとまるで、人は除け者にするために鬼という存在を生み出したみたいに思ってしまう。
哀れむつもりなんてないけど、可哀想。そんな気持ちを込めて私は豆を手に取る。
「鬼はー内!」
皮肉混じりに豆を庭にばら撒いてみる。
「あれ?矛盾してるかな?」
煎った豆は鬼の弱点だと聞いた。まあ、だから節分に撒くのだろうけど。これでは鬼を招こうとしているのか、追い払おうとしているのか、わからなくなった。
まあいいや、と残りの豆を頬張りつつコンポの電源を付ける。心地良い音楽と春の陽気に包まれて、私はただ、まどろんでいた。

「鬼は内、福は・・・?」

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あきゅろす。
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