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小説〔短編集〕
アドエイクの旅〜極楽の地を求めて【其の弐】〜
今日のスケジュールは24時間耐久電卓の早打ち。そう考えながら、やがてアドエイクは交番に到着した。
「おまわりさん、俺を牢にいれてくれ」
アドエイクは警官の背後から言った。警官は首だけ180度回転させ、アドエイクを見た。
「お前、もう探偵はやめたのか?-------あ、すまん。人・・・・・じゃない、魚違いだった」
「うお・・・!?」
「気にしないでくれ。じゃあ、中で話を聞こうか」
照れ隠しなのか、首を右回転させている警官に連れられ、署内の畳の上に正座して向かい合った。
(今の刑務所は畳なのかー・・・)
「・・・で、何をしたんだい?」
「・・・・・・・・」
警官の問いにアドエイクは沈黙するしかなかった。答えようがない。必死に考えた。
(何をした?俺は・・・何か、何かないか・・・!?)
待ちくたびれているのか、警官は首を左に高速回転させている。
「なんだぁ?何も悪ィことしてねぇのに牢に入れろって言うのか?それじゃあ俺が悪人だろうがよ」
「いや、待て!俺は何かしている。・・・例えば、今朝、罪のない虫を誤って踏み殺してしまった!」
一瞬沈黙。やがて、警官が口を開か---ないまま
「・・・そんなこたぁ、誰にでもあるだろ。んなことでいちいち警察沙汰にしてたら国が滅ぶっつの」
と言った。
(腹話術うまいなぁ・・・)
「で、お前は結局何しに来たんだ?」
「それは飯に-----じゃなくて、牢に入りに来・・・」
ここで空腹絶頂のアドエイクの腹が盛大になった。
「・・・・なんだ、お前。腹減ってんのか?」
アドエイクは黙したままだった。今思い出した。自分が空腹で足下さえおぼつかないことを。
「んだよ〜。そうならそうと、言ってくれりゃーいいのによ〜。・・・待ってな、今、カツ丼持ってくるから」
警官の言葉にアドエイクは目を見開いて驚いていた。まさか、これだけ迷惑をかけておきながらカツ丼を馳走してくれるとは・・・!
「待たせたな。ほら、カツ丼だ。食え」
「・・・面目ない、そなたのご恩、決して忘れぬ」
アドエイクは早食いながらも一口100回噛む事を忘れてはいなかった。彼の口の動きは誰が見ても・・・ゲボァ。
「ははは、いいってことよ。困ったときはお互い様、うちはそれで通ってるんだ」
警官が首を縦回転させながら言った。アドエイクは吹き出しそうになるのを必死に堪えながら食べ続けた。

それから3日が経った。この日アドエイクは、路地裏のゴミ捨て場に来ていた。お決まりのゴミあさりである。
(これは・・・食えるのか?変な臭いがする)
アドエイクにはゴミあさりは初めてのことだった。どれくらいまでが食べて平気なのか、まだ解っていない。
困っていたところに、ひとつの黒い影がアドエイクに接近してきた。それはアドエイクの足をつついた。
「うおっ!!?」
アドエイクはビックリしてゴミの中に転倒した。
「な、何だ・・・」
アドエイクの目に映ったもの、それは一匹の鴉(からす)であった。鴉は口に何かを銜えている。それをアドエイクの前につきだした。
「ん?これは、昆布・・・!」
鴉はアドエイクと昆布を交互に見ながら、カーカー、鳴いている。
「・・・もしかして、くれるのか?」
そうだ、と言わんばかりに更に近くへ持ってくる。
「ありがとう、鴉ってこんなにいい奴だったのか・・・」
昆布を受け取り、鴉の頭を撫でてやる。
-----こうして、アドエイクは鴉と友達になったのであった。
                    -続く-



【番外編〜おまけ〜】
「ホントっにありがとう、おまわりさん!」
「あははは、だからいいってば困った事があればいつでも来て良いぞ。カツ丼くらいなら馳走しよう」
「いや、そんな幾度も迷惑はかけれない。・・・でも、また来るぜ」
「あはははははは、いつでも来いよ」
「ふはははははは」
「ははははははは」
アドエイクは右、警官は左に首を高速回転させながら笑いあっていた・・・。
                 -番外編 完-


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