[携帯モード] [URL送信]

小説〔短編集〕
アドエイクの旅〜極楽の地を求めて【其の壱】〜
 焼鳥屋の一件以降、ガムで飢えを凌いできたアドエイクであったが、3日経ってそれも厳しくなった。ガムの残数があと僅かになったことと、何よりガムに飽きたのだ。毎度味がしなくなっても永延と噛み続けているため、そろそろ“嫌々”が“トラウマ”に変わる頃である。
「はぁ・・・・いい加減水とガムだけの生活は嫌だぜ。しかも、あこのスーパー、俺がやたらと試食を食うせいで最近試食がなくなったし・・・」
 アドエイクはやたらと迷惑人であった。この3日間、試食を食い荒らしたり、相変わらず全くウケない路上ライヴを開いたり、通りゆく子供の持っていたお菓子をねだったり、自販機を手当たり次第あたって小銭を探したりしていた。いながらもアドエイクは南下して石川県白山市に来ていた。
『ひったくりだーーー!!!』
 アドエイクが歩いていると突如そういう叫び声が聴こえた。
(・・・ひったくり・・・?捕まえれば、金もらえるかな?)
 そうも考えたが、アドエイクは追わなかった。いや、追う事ができなかった。空腹で歩くのがやっとな状態だ。走れば間もなくぶっ倒れるであろう。
(・・・・はぁ、このまま死んだ方が楽かもな・・・。いや、待て!そういえば、隣の家のエリ(犬)に、必ず帰る、って言ってあるんだったけ・・・)
 考えてるうちに可笑しくなり、アドエイクは、ははは、と笑い出した。周囲から見れば変態極まりない。警察呼ぼうぜ、という子供の声も聴こえてきた。
(警察・・・・?・・・刑務所・・・・ごは、ん・・・。・・・!!!)
 それだっ!!アドエイクは叫んだ。子供が驚いて逃げる。
(そうだ!そうなんだな!!刑務所に入ればご飯が支給されるではないか!!さて、そうときまれば・・・)
 アドエイクはどこかに、誰かに導かれるかのようにふらふらと歩き出した。薄気味悪い笑みを浮かべながら--------
                  -続く-




 その頃、アドエイクの故郷「富山県射水市某地区」では、アドエイクの存在が忘れ去られようとしていた。無論、エリ(犬)はアドエイクの言葉など理解しているワケがなかった。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!