小説〔短編集〕
アドエイクの旅〜ここから〜
---あっちむいて2人でまえならえ〜
西暦2015年、日本、石川県金沢市のとある駅前。もう人々の記憶から忘れ去られていたネタをひとりでやっている青年がいた。彼の名は“アドエイク(英語明記“Odake”)”である。何故彼がそんな事をしているのか。それは、金がないからである。毎日が同じような事の繰り返し。そんな生活に愛想を尽かして家を飛び出したのはよかったが、所持品が貯金箱(500円)と歯ブラシ、あと何が入っているのか解らない、埋め損なったタイムカプセルだけだったのである。これでは何も出来ずに飢え死にだ。流石に厳しい。そう思って駅前コンサートのようなノリで資金稼ぎを試みたのである。
結果として集まった金額は、400円。
「まじで・・・・?あれだけやってたったこれだけかよ・・・」
太陽が傾きかけた駅前の路上で、アドエイクはガックリと膝をついた。
「昨日はスーパーの試食でなんとか乗り切ったが・・・・今日は試食なかったしなぁ」
と、アドエイクが肩を落として歩いていると、ふと視界に飛び込んだものがあった。
「あっ・・・・あれは・・・!!」
それは----------
〜次回に続く〜
--------ワケがない。
それは、紛れもなく焼鳥屋だった。
(今日は、あまり金も貯まらなく朝ご飯は子供に貰ったポテチ一枚だったから現在空腹絶頂で死にそうな勢いだが、ここで焼き鳥が食えるとは・・・!!!)
アドエイクは駆け足で焼鳥屋に入っていった。戸を開けると場の雰囲気が一瞬凍り付く。しかし、彼はそんなことは全く気にしないで近くの席に腰をかける。3分後にやっと店員がやってきた。
「いらっしゃいませ。ひとつ10円になります。」
「“ひとつ”?・・・・まあ、いい。じゃ、5本ください」
「かしこまりました。少々お待ちを」
店員が去ってから十数秒後、店員がやってきた。
(早かったな・・・)
アドエイクがそう思った直後に、テーブルに何かが置かれる。
「お待たせしました。5つで50円です」
先払いか、と心の中で呟き、テーブルの----自分の前に置かれたものを見て、アドエイクは唖然とした。
「おい、これは・・・・・焼き鳥ではなく、10円ガムじゃないか!?」
「そうですけど?なにか?」
「焼き鳥は・・・?」
「はぁ?誰がテメェなんかに焼き鳥を食わせるもんか。とっとと金払って帰れ、ボケェ」
アドエイクは仕方なく50円払って店をあとにした。出て行くときに沢山の笑い声が聴こえた。
「ちくしょー・・・駅前コンサートよりウケてるじゃねぇーか・・・・」
すっかり日が暮れて、アドエイクは仕方なく公園の外灯の下で夕食代わりにガムをひとつ、噛んでいた。たとえ、味がなくなっても、そのガムはアドエイクが寝付くまでずっと噛み続けていた。
---旅はまだ始まったばかり。まだまだアドエイクの旅は続く・・・・・
〜了〜
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