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がくえんぱられる。
第四種目 借り物競争

 お昼ごはんが終わって俺たちは陣地に戻った。

『借り物競走に出場する選手の方は、整列してくださいませ』

 シルハの声が響いて、俺も含めて何人かの生徒が立ち上がった。
 うわ、ユリィとケントじゃん! 何か凄そう! C組はメルとリオだ。B組は俺と一年の子。名前……忘れちゃったよおおお。
 本当はパン食い競争出ようかなって思ってたんだけど、何か「お前じゃ身長が足りない」とかって言われて借り物競争に回されたんだよなー。……何か微妙にバカにされてるのは気のせい? 気のせいだよな!
 よーい、どん。
 全員がまず直線コースを走って、適当にばらまいてある紙を拾うっていう仕組み。何か紙が異常に多いんだけど、ここで当たり外れを引くかはその人の運次第だって。よーし、これだ!!

『自分より背の小さい男子』
「微妙ー!!!」

 え! ちょっと待ってよー! 俺より背の小さいのなんてカイルくらいしかいないって! そんでもってどう連れ出したらいいかわかんないって!

「よっす、どうしたユウ?」
「ユリィ」
「……ぶはははは! お前すっげえの引いたな!」
「むー。ユリィこそ何引いたのさー」
「オレ? オレは確か『イケメンに姫抱っこしてもらいながらゴール』だってよ!」

 絶句。

「そんなわけでオレは生徒会長にアタックしてくるぜ! じゃあな!」

 気がついたら生徒たちはてんでばらばらに散っている……わけでもない。リオだけが残っている。気難しそうな顔してるけど、どーしたのかな?

「リオ? だいじょーぶ?」

 あー、うー、とリオは返答にもならない返答をしてる。……全然大丈夫そうじゃない。ふと持っている紙を俺は覗き込んでみた。

『一番尊敬している生徒 ※教師は不可』
「………………」
「………………」
「……いない?」

 俺の問いにリオは首を振った。何だ、じゃあその人に声をかけて連れてくればいいじゃんって俺は言ったんだけど、リオは冗談じゃないと首を振った。

「これ以上あのバカを図に乗せたくないんです」
「へ?」
「でも他に思いつかないし……どうしたらいいか」

 あ。
 なんとなく、分かった。
 俺はリオを連れて自分たちの陣地に戻った。

「おいどうしたユウ?」

 目ざとくアルフが声をかけてくる。ぺこ、とリオは一礼をしてまた俺のほうを見る。

「ちょっとねー。カイルー、俺と来てー」
「それは構わねえけど、何の借り物なんだ?」

 ぎく。
 それは正直言えないっていうか言いたくないっていうか。
 顔を引きつらせている俺を見かねたのか、カイルが嘆息した。

「しょうがねえなあ。さっさとゴールしねえとなんねえからな」

 って笑いながらカイルは立ち上がった。持つべきものは友達だって昔の人も言ってたからなあ。

「あの、僕は……」
「何で? シオンなんじゃないの?」

 リオの尊敬してる人、と小声で言うと今度こそ言葉に詰まった。俺だって近所付き合いは大事にしてるから、この二人の仲良しぶりはよく知ってる。リオは邪険にしてるように見えて、バカとか何とか憎まれ口を叩きながらも兄を大事にして敬ってることくらい、俺じゃなくたってみんな知ってる。

「……本当、あんたには敵わない」

 リオが苦笑するのとシオンが楽しそうに立ち上がったのはほぼ同時。

「ったくお前ときたら俺のかわいい弟にヒントあげやがって。一応他のチームなんだぞ?」

 って言いながらシオンは笑っている。ぽふ、と俺の頭に手をやってぐしゃぐしゃと乱暴に撫でてくる。うわわ、脳みそゆれるー。

「うっしゃ、他のチームも何か苦戦してるみたいだし、競争だユウ!」
「よーっし! でもカイルは足速いんだぞ!」
「ちょっと待てってお前がゴールしねえと意味ないだろバカ」
「あ」
「はははお前らおもしれー。……りー、行くぞ!」
「分かってるよバカ兄貴」

 言うが早いか俺たちはゴール目がけて走った。
 うわーあの二人むちゃくちゃ速いー!! でも俺も負けない!
 で、四人で競争してるかと思いきやそうでもなかった。

「おっさきー☆」

 と言いながら生徒会長がきらきらとした笑顔を振り撒いて、何かを抱えて猛スピードでゴールテープを切っちゃった。

「生徒会長さっすがあ!」
「こんなんで満足ですか? お姫様?」

 ってユリィだ! そっか、イケメンにお姫様抱っこされてゴールだったもんな! と自分でも呆れるほどレースそっちのけで俺は考えていた。
 結局俺たちは同着でゴール。どうしても借り物が見つけられなかったチームもあったんだけど……そりゃあ「カカオ丸ごと」とか「ニガウリの種」とか言われたら普通敷地内にあるわけないもんなあ。
 余談だけど、リオはシオンにバレる前に紙を握り潰して捨てちゃった。


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