がくえんぱられる。
第三種目 パン? 食い競争
午前最後はパン食い競争。なんだけど、どう見てもパン以外の何かが吊るされてるのも結構ある。というか選手の数とパンの数がどう見たって合わない。もっさりパンが吊るされてる光景は……はっきり言って変だ。
この種目にはラースが出ることになってる。あ、三年からは副会長が出るんだー。あ、ルネもいる。あとは……書記の女の子かな? 副会長と何か話してるけどここからじゃ聞き取れない。
俺がぼーっと考えてる間にレースは始まってた。うわ、ちゃんと応援しないと!
「あれどう見たって多いよな」
「だよねー……」
「つかラースはなんであの種目選んだんだ?」
「しょーきょほーだってー」
「…………」
俺の一言にカイルは黙っちゃったよ! な、なんかごめん!
ラースって結構かっこいいから女の子に人気がある。下級生なんかは黄色い声援をラースに送ってるけど本人はどうやらそれどころじゃないみたい……ようやくパンをくわえたと思ったら「辛っ!!」ってわめいてる。
『食い物は粗末にしないように☆ 全部食ったらゴールしていいぞー』
「くっ……」
それを叩きつけようとしたラースだけど学園長が釘を刺した。やっぱりパンに何か仕込んであるみたいで、副会長も「にっげえええ!」と悲鳴を上げている。まともなパンは一個くらいないの? と思ってたらルネが完食してゴールしてった。普通のパンだったのかな、多分。
その他にもパンにそっくりな模型とか砂糖菓子とか(パンじゃないからカウントされないんだって!)とにかく色々いっぱいあるんだ。フライパンに見せかけておいて本物のパンだったりするから油断ならないよね。フライパンとパンが一緒に並んでる光景なんて、俺初めて見た。
とことこと書記の子がゴールした。ラースは……死にそうになってるけど大丈夫かな……?
「おいユウ、ラースは辛いのは……」
「全然駄目だったはず……」
俺の答えにアルフは頭を抱えた。うん、そうなんだ。ラースは甘いのも辛いのもあんまり得意じゃない。カレーは結構覚悟して食べるんだって。バレンタインも毎年大変そうにしてる。そして今は、辛いパンに苦戦してる。女の子たちが「がんばってー!」と黄色い声を上げていた。さっきも言ったけどラースって結構モテるんだよね。
「おら食ったぞクソ学園長!」
とかって言いながら副会長がゴールした。書記の子が、小さく拍手してる。
ラースは結局時間切れだった。明らかに不機嫌オーラ丸出し状態で陣地に戻ってきて、何か、俺の方に来てる?
「食ってみろ」
もが?
俺が抵抗する隙もなく、ラースは俺の口にパンを押し付けた。
「もがー!!!!」
辛っ!! 何これすっげえ辛い! 意味分からない!!! 心臓止まるかと思った!
「おいユウ大丈夫かっ!?」
「ラース! 八つ当たりはよせよなあ!!」
アルフとカイルが何か言ってるけど正直俺にはあんまりありがたくない……。もがもがしてると誰かが近寄ってきて(涙目だからよく見えないんだ)パンの半分以上をむしりとっていった。
「あらあら、だらしないですわねえ」
その声はヨウヒっ!? ってか体育祭参加してたんだ!!
俺の困惑をよそにヨウヒは優雅にパンをちぎって口に入れる。
「まあまあですわね」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………もが」
ふふん、と不敵に笑うヨウヒに、俺たちは何も言えなかった。
言えるわけ、ないよね……。
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