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がくえんぱられる。
第一種目 妙に長い徒競走

『それでは第一種目、徒競走を開始します。選手の皆様は指定の場所へお並びくださいませ。なお、実況は放送部のシルハ・コレルネットと……』
『俺だよ俺! 学園長様がお送りするぜ!!』

 シルハはそのきれいな声を買われて放送部にスカウトされたんだって。実際放送も上手いし、すごいよなあ。
 俺たちがいるクラス別陣地と実行部のテントはグラウンドを挟んだ対角線上にある。グラウンドはきれいに整備されていて、白い粉……これ何て言うんだっけ? がコース毎に引かれていた。
 シルハの隣にいる学園長は何をイメージしたんだろう、白いタンクトップに何か絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜたような模様をしたそれを着て、びっくりするくらい真っ赤な短パンを穿いてる。何だろう……目を細めたら何か見えるかな? ……そんなわけないよね。
 組み分けはクラス別、つまり一年から三年までの同じクラスをひとつの組として競うんだって。俺がいるB組のテーマカラーは何でか紫。ケントやルネたちがいるA組はオレンジ、メルのいるC組は緑。……なんで中間色ばっかりなんだろう、まあ、いっか。
 徒競走は組から二人ずつ選出されてて、要するに一年と三年が出てる組もあれば二年から二人出てるっていうクラスもあるみたい。B組は誰が出るんだっけ。あ、カイルだ。あとは一年生みたい。
 へー、ユリィも出るんだ。あ、リオもいる。あとは……うわあ生徒会長がもう出てるー! いいのこれっ!?
 女子生徒の黄色い悲鳴を独り占めした生徒会長は慣れた仕草で手を振り笑顔を振り撒いている。横ではリオが嘆息していた。あ、同じクラスだっけこの二人。……てか俺のクラスでも何人か生徒会長のファンがいるから、カイルへの応援がそっちのけになってるのはどうなのかなあ……。うん、やっぱりつまんなさそうな顔してる、カイル。

『揃いましたわね? それでは学園長、合図をお願い致します』

 シルハの声に応じて学園長はピストル片手ににんまり笑って立ち上がった。

『位置についてー、よーい……』

 その合図で全員がスタートの体勢をとる。

『ドン! ってやったら走れよ!』

 やると思ったー!!
 ほらやっぱり何人か転んじゃったよ!
 気を取り直して改めて体勢を整える選手がなんだかかわいそうになってきた。

「なーなーラースー」
「何だよ」
「何で徒競走なのに三百メートルも走らせるんだろう?」
「…………俺に聞くな」

 そう、徒競走ならせいぜい百メートルも走ればいいのに、何でグラウンド一周半もさせられるんだろう?
 俺がそう思っていると、今度こそ「ドン!」と空砲が打ち鳴らされた。

『まあ、どのクラスも速いですわねえ』
『だな。トップはやっぱり生徒会長か? いやB組も頑張ってんなー』

 スタートダッシュを切ったのは生徒会長とカイルだった。後からユリィやリオも続いているけど、追いつくのかな?
 とか何とか考えてたら、いきなり壁が出現した。

「ぶっ!」
「あぶねえ!」
『まあ、今年は壁ですのね』
『そ。オーソドックスだけど結構痛いんだぜ☆』
『C組だけは順調ですけれど、他の方々はこの先どうでしょう?』

 ……どういう仕掛けか俺もわかんないんだけど、学園長は毎年こうやって変な仕掛けを作るのが大好きなんだ。そりゃあさあ、全速力で走ってる最中に壁が地面から出てきたら普通ぶつかるよね……。あ! カイルもぶつかってるよ! てか生徒会長どうやって避けたの!?

「…………」
「…………」

 俺とラースは絶句した。鼻を強打したんだろうなあ、悶絶してるカイルを後ろの選手が次々と追い越していく。けれど壁地獄はまだまだ続いていて、最終的には生徒会長以外の選手があちこちに青痣を作りながらゴールした。うわあ……すっごく痛そう……。
 選手たちは陣地に戻ることなく、保健委員が常駐しているテントに向かった。ミナクリス先生が、学園長を睨んでいるのは気のせいかなあ? いや……気のせいじゃないよね、多分、きっと。オーラが怖いよ!
 やがて戻ってきたカイル(半泣き状態)を全員で慰めて、徒競走は終わった。


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あきゅろす。
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