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海の青と月の気持ち 〜 JOKER
血を分けて
「俺達がヤキモチなんかで殺されるかよ」


「うん。アタシには傷一つ付けず上手に切れたから、この事はドフラミンゴには内緒にしといてあげる」


「...七武海の女か。掃いて捨てるほどいる内の1人だろうがな」


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわよ。だから黙っててあげる」


「んなこたァどうでもいい。それより、てめぇの鎖は全ていただいたハズだったんだがなァ?どういうカラクリだ。能力者か、てめぇも」


ゆぅの鎖を玩びながら不敵に嗤うキッドにフッと笑い返すと、船べりに立っているゆぅは狙ったように立ち上がった波を頭からモロにかぶり、一瞬波に覆い隠される


「どういうカラクリか知りたい?」


何事もなかったようにそう尋ねるゆぅ。体に巻きついていた鎖は消え、細切れになったはずの服は完全に元通りになっている


「そういう事かもね」


キッドの持っていた鎖の端が彼の腕に巻きつくと、体の力が抜け片膝を付く。それを見たキラーはすぐに鎖を断ち切ると、キッドの手から鎖を引き剥がした


「ごめんね、ちょっとふらつくくらいにするつもりだったのに。最近、力のコントロールが雑になっちゃってさぁ...」


断ち切られた鎖を左手に取り込みながら、へたりと甲板に座りこみうなだれるゆぅ


「ケンカしてたからって、すぐに疲れすぎよねぇ....ねぇ、ちょっと血を分けてちょうだい」


思わず身構えるキッドとキラーだったが、ゆぅは上げた顔を海王類に向けた


のど元に刺さった鎖を海王類の血液が伝い流れてくる。掌に鎖を握りこみ親指を咥えて与えられた液体を飲みこんでいくゆぅの表情は、どこか恍惚としていて甲板にいるものを取り込むような妖艶な空気が放たれていた


しばらくして飲み終わると、ゆぅは持っていた鎖を投げ上げる。鎖はそのまま海王類ののど元から体内へと吸い込まれていき、全てが入りきると海王類は低く喉を鳴らして静かに海へと戻っていった


「うん。ありがと、助かったわ」


答えるように呟いたゆぅは、それでも海王類の方を見ることなく掌に残った液体を舐めとっている。獲物を食べつくそうとする獣のような光が眼差しに宿る


「キッド、悪いけどアタシ乗ってくから。場所はココでいいし、犯されようが殺されようが文句は言わないわ。もちろん抵抗はそれなりにさせてもらうけど」


掌を舐め終わったゆぅは、獣の瞳のままキッドを見つめて一方的にそう告げると、ゆるゆると上体を倒して眠りに着いた


「....勝手にしろ。俺は知らねぇ」


吐き捨てるように言って、キッドは船内へと戻っていった


戸惑っているクルー達の視線を受けたキラーは、ゆぅの元へ歩み寄り傍らへ片膝をついてしゃがむと、そっとゆぅの頬に手を乗せる。そのまま頭へと手を滑らせ後頭部を撫で下ろしていくが、ゆぅは静かに眠ったままでいる


羽織っている短い上着を避け、ワンピースの肩ひもに手をかけると強い静電気のようなものに手を弾かれた。静かに立ち上がり鎌を振りおろすと、ゆぅの髪がそれを取り上げキラーのすぐ脇を通るように投げ返された


「こういう事らしい。気になるならお前たちも試してみればいい。殺すつもりはなさそうだ。俺は昼飯を食ってくる」




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