海の青と月の気持ち 〜 JOKER
一流のショー
船尾の広いスペースに場所を移し、ミホークと対峙するゆぅ。その腕には手首から肘まで鎖が巻きつけられ、攻防の準備は整っている
『なんでまたアイツの稽古に付き合ってあげなきゃいけないの?』
『一流のモンは見れるときに見せてやらねぇとなァ?俺の部下のためだと思え』
そんな風に言われては、イヤだとは言えなかった
ゆぅは目を閉じ心に刻む....
みんなのため....
みんなが強くなるため....
強くなってドフラミンゴを助けるため....
ドフラミンゴを強い世界に連れていくため
静かに開かれたゆぅの目を見て、クルー達は背中に冷たいものを感じた....あの時、船を奪いに来たと言った2年前ともまったく比べられない眼差し。あんなものは片手間のお遊びだったのだろう
「始めて構わんか?白」
「多少は強くなったみたいね?黒」
2人がニヤリと笑い合って激しい打ち合いを始めると、目が釘付けになるクルー達。互角に戦うゆぅに驚いていたのも初めのうちだけだった
高い金属音が続いたかと思うと、無声映画のように音もなく相手を受け流し合い、ふとまた大きな衝撃で剣を合わせる
離れて間合いを取った次の瞬間には、すぐ別のところで剣を打ち合う....息をのむ間も瞬きする間もないほどに
「ドフラミンゴ、いつまでやればいいの?一通りは出したと思うわよ?」
「やはり、俺に合わせていたのだな」
「打ち合いだけならなんとかね。でも、鎖がアタシを守ろうと疼いちゃってしょうがない」
2人の話し方は、2時間以上打ち合い続けているとは思えないほど普通で。もちろん話をしている、今、この時も剣を打ち合わせている
「では、これで最後だ。部下を傷つけるなと言われたが、本気で構わんか?」
「アタシはドフラミンゴの部下じゃないわ。手加減してくれてたの?」
「いや、ここまでも本気だ」
「じゃぁ次のが特別ってことね。やってご覧なさいな、受けてあげるわ」
いったん間合いを取り、最後の一撃に備える2人....空気の張りつめる甲板
駆け寄る2人、いくつもの金属音が重なって響くと、ゆぅの剣が宙を舞い粉々に砕ける
視線を甲板に戻すと、ミホークの手を離れた黒刀と共にバラバラと落ちるゆぅの鎖
黒刀を叩き落とした短剣を、ゆっくりとミホークの喉元へ当てるゆぅ
「アタシとしては、鎖を使っちゃった時点で、剣の戦いは負けなんだけど。アンタは納得しないんでしょうね?」
「戦場ならばコレで俺の命はないからな」
はぁ...と一つ息を吐き、クルーへ向けたゆぅの顔は、いつもの眼差しで少し困った表情を浮かべている
「喉渇いちゃった、アイスティーちょうだい?」
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