海の青と月の気持ち 〜 JOKER
色気
女のグラスから酒を飲み、空いた右手で食べ物を口に入れるキッド。女の隣に座り、ニコニコとまた一升瓶を煽り始めるゆぅ
他のクルー達と一緒に唖然として見ていたキラーが、やっとのことで口を開き尋ねる
「ゆぅ....その....いいのか、それで?」
ゆぅがキュポンと瓶から口を離して周りを見ると、クルー達は複雑そうな表情で自分を見ている
「ん?ああ、そんなに心配?」
コトンとテーブルに置かれた一升瓶。ふふっと笑ったゆぅに違う雰囲気を感じたのは気のせいだろうか。キッドが女からグラスを取り上げる
「ねぇ、キッドくん」
グラスを傾け答えないキッドにではなく、ゆぅが語りかけたのは女の耳
女の肩を引き寄せる左手。密着する体。耳に触れそうな唇。見ているこちらがクラクラするのは、酒をいつの間にか飲み過ぎていたのかもしれない
「この女の子。面倒くさいなら、アタシがもらってもいいよ」
首筋にそっと落とされた唇に、固まっていた女が一つ震え、顔がみるみる紅潮していく
「今夜は船に戻るんだろうが。女はナシだ」
何事もないように静かに答えたキッド。いつの間にか組み替えた2人の手は掌で女の腰を支えている
「そっかぁ....ふふっ」
その声に惹き付けられるように振り返る女。ニヤリと嗤うゆぅと視線が間近でぶつかると、女の口から吐息が漏れる。ゆぅの瞳が揺れたのは飲んでた酒のせいなんだろうか
「残念。こんなにカワイイのに」
ゆぅが女の左頬に近づくとあちら側にも赤い影が近づいてくる
左右の頬へ同時に落とされた、触る程度の口づけに、女は意識を失った
今、背中を駆けあがっていった感覚は何だ
ゆぅに釘付けとなった視線はそのまま、誰も答えを出せずにいる
「ちょっとぉ。キッドくん?余計なことしないでよっ」
いつものゆぅの声にハッと我に返る男たち
「座ってられるくらいにしとくはずだったのに、倒れちゃったじゃん!」
「知るか。俺にくっついてきた女だ。てめぇだけで遊んでんじゃねぇよ」
「みんながアタシに色気がないって心配するから、ちょっと見せてあげるだけだったのに」
え?色気?その話は、席に着くなり一升瓶をラッパ飲みしてた時じゃ....?
思い出しながらコソコソと話すクルーたち
ゆぅが女に絡み始めたのは、頭が女に世話焼かれてて、それでいいのかってキラーが....あ?
「「あぁっ!あの時も、ラッパ飲みしてやがったぁ!」」
「おい、船に帰るぞ。足んねぇヤツは酒持って帰れ」
「なぁ、頭ぁ....ちょっとだけ遊んでっちゃあダメか?」
「あ?明日さっさと終わらせりゃあ、ゆっくりヤれんだろうが」
「ねぇ、この子、持って帰れば?....あ。ダメだ。1人2人じゃないや」
こちらを見るクルー達を見まわして、ゆぅは眉を寄せる
「ごめん、キッドくん。さっきのアタシの色気に当てられちゃって、結構な人数が生殺し状態。ちょっとだけ遊ばせてあげて?」
「チッ、余計なことしやがって。もたねェヤツ、朝日が出るまでに帰って来い。戻んねェとゴミと一緒に捨ててくからな」
「あと、誰か、この子にして連れてって?置いてくと、ここのお客さんたちが取り合っちゃうからぁ」
無事、朝日が昇る前に全員が集まり、全ての積荷の確認と新しい物の仕入れはキッドとキラーの予想以上に首尾よく進む。まだ日の高いうちに全てが終わり、クルー達は町へ飛び出していった
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