海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
形だけの契約
叶わなかった時間を惜しむように
切ないキスは髪の色が無くなるまで続けられた
始める事すらできずに終わってしまう想いを掴まえていたくて....アタシは目を開ける事ができなかった
「もしゆぅが俺の船に乗ってたとしても、この島で別れたんじゃねぇのか?」
悲しいはずの言葉を優しい声で諭されて、目を開けてキッドくんを見上げる
一度瞬きをして涙を頬に落とした後、もうアタシは泣かなかった。キッドくんを見ていたかったから
「ゆぅの思い出の中でゴールド・ロジャーを見て、同じ時代を生きた白ひげが残したあの言葉を聞いた。そういうことだろ」
アタシは小さく頷いた
「それがキッドくんのためにできることだった....だから、アタシはきっとこの島で船を降りた」
「サウスブルーで始まって、グランドラインで中断したってことにすりゃあ、終わりにもギリギリ間に合ってるじゃねぇか」
「....始まって、たの?」
「始まりもしねぇのに終わるかよ。契約なんて形だけだ、くだんねぇ」
「く、くだっ....?」
パートナーが心の拠りどころだって知ってるのにそんな事を言うキッドくんは、アタシがあたふたしてることも気に入らなそうな顔をしている
「過保護なヤツラが積み上げてきたルールのせいで、自由に惚れることもできねぇじゃねぇか」
「そんなこと、ない!アタシ、ちゃんとみんなの事が大好きだったもん!」
「ぶっ倒れた時も、終わりにしてくれって泣いてたんだ。自分で終わりにできねぇもんが自由なわけねぇっ」
怒鳴ったキッドくんの瞳は怒ってなんかなくて....ひどく悲しそうだった
「契約と一緒に、はい、終わりってのもな」
「キッドくん....」
思い残すことなんて....あるに決まってる
アタシを助けになんて来なければ、そんな想いも思い出したりしなかったのに
「ごめん、ね?」
「どうせくだんねぇこと考えてんだろ。これが俺だ。謝られる筋合いはねぇ」
アタシの腰に回していた腕をほどき、手を頭に乗せて覗き込むキッドくん
「それより、最後は笑って見せろ。俺にどんだけ惚れてんのか分かるようにな」
そんな事を言われて、また涙が滲みそうだったけど....キッドくんがアタシのためにしてくれたお願いだもん。叶えないわけにはいかないじゃない
「ありがと、キッドくん。大好き!」
アタシの視界いっぱいに広がっていく金色の光の中、キッドくんはニヤリと満足そうに笑う....アタシも最後に笑顔が見れて....
金色の闇につつまれ、全てが消えた時
右手を包んでいた手が離れていった
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