海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
最初で最後
「おい、ゆぅ」
呼ばれて泣き顔のまま見上げたゆぅの額に、一つ口づけを落として笑うキッド
驚いて目を瞬かせたゆぅの涙が止まる
「お前、あれで何もしなかったってんなら、他に何をしでかすつもりだったんだ?」
「え?」
「サウスブルーでの疫病神っぷりを忘れたとは言わせねェぞ?おかげでここまでグランドラインがかわいく思えたくらいだぜ」
「疫病神....?」
「どんなスコールが来ても、甲板がプールにはならなかったし、直後に待ち伏せてる船もいなかった」
「....そう、言えば、うん。アタシのお酒に穴を開けたバカなヤツもいて....」
「船を傾かせるほど重てぇモンを乗せるバカもいなかった」
「だから!あれは、キラーが大きくしてって言ったんだってばぁ!」
「グランドラインの荒波ったって、あの時の『大きめ』くらいの波だったしな」
「練習にはちょうど良かったってこと?」
「ちょうどじゃねぇ、やりすぎすぎだから疫病神ってんだ。お前が船に乗ってる間に起こったバカみてぇな事のおかげで、大抵の事は誰もビビらずに乗り越えてきた」
「うふふ、良かった!」
「わかったな?お前が何もしてねぇなんて泣かなくていい」
ったく、やっと笑いやがったと、キッドは嬉しそうな顔でゆぅの頭を撫でる
見上げているゆぅも幸せそうに目を細め、安心したように「良かった」ともう一度呟いた
もう一度額にキスを落とすと、頭を撫でていた左手を降ろし、ゆぅの右手を握るキッド
「やっぱり、これが落ち着くな」
「うんっ。キッドくん、大好き!」
「そこの七武海ヤローよりもか?」
「ふふ、ドフラミンゴの事になると、すっごくムキになるよねぇ、キッドくんは。そんな事言ったらいじめられちゃうよ?」
『あの人』と言わなかったゆぅに機嫌をよくしたキッド。その頭を引き寄せて、ゆぅは耳元で囁いた
「でもね?うふふふっ、ドフラミンゴよりもキッドくんの方が大好き!」
「ハハッ、そりゃあ、いい!」
額を合わせた至近距離。幸せそうな笑顔で見つめ合う2人
「それなら....思い残すこたぁねぇ」
えっ?と思う間もなくゆぅの口はキッドに塞がれていた
同時に淡い金色に包まれる2人
ゆぅの髪の色が少しずつ舞い落ちてゆく中、最初で最後のキスが交わされた
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