海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
空と海の混交
朝日が昇ってもうずくまったままの不死鳥
「昨日、遠出をしたからじゃねぇか」
「ゆぅの気が済んだんだろ」
「少しくらい寝坊したってなぁ?」
「ジョズは心配性なんだよ」
特に変わらぬ様子で眠っているが....違う
マルコはゆぅの力の影響で疲れることはないと言っていた
ジョズは不死鳥の傍らに腰を下ろした
「どうした、マルコ」
「ゆぅが....揺れてるよい」
「揺れてる?」
うっすら開かれた不死鳥の目がジョズを見る
「はっきりした、意識の、塊、だった、のが....ぼやけて、ゆらゆらと....」
「お前も大丈夫じゃねぇな?」
「海を、抱いてる、みてぇ、だよい」
『離し、て....マルコ....』
「バカ言え、よい....お前、あんなに、温かかった、のに....こんなに、冷たく、なっちまって、よい」
『ごめ....海の力が....髪と瞳に、取り込んだ分が....母上たちにも、押さえ、られなくて....ごめん、マルコ....』
「ゆぅ、その海の力で出られねぇのか?」
『できな、いの....力を、使う、どころか、アタシの、方が、取り込まれ、そうで....だから、離して』
「素直、に、『助けて』って、言えって....前にも、言ったはずだよい」
『助けて、欲しいの。だから、離して....アタシ、一人で、眠るから....満月、まで....お願い....あなた、まで、消えない、で』
「マルコ、ゆぅは強がりとかで言ってんのか?わかるんだろう?」
「....分かった、よい」
強く、強く、抱き込むようにしていた意識を、そっと、ゆっくり、ゆるめていく
離したくねぇ....また、胸が痛ぇよい
『ごめん、ね?マルコ....』
ゆぅの意識が小さく集まり、マルコの胸元に収まった
一度、大きく不死鳥の体が燃え、炎からマルコがゆっくり立ち上がった
「ゆぅは眠ったよい....」
「大丈夫....じゃぁねぇな、その顔色は」
「顔色?」
「あぁ、それに足元もふらついてるじゃねぇか。ずっと鳥の姿だったんだしな。座るなり横になるなりしてろ」
自分の体を見て、驚くマルコ
「なんで、人の姿なんだよいっ!ゆぅはまだっ....」
「落ち着け、マルコ。ゆぅはソコにいるんだろう?」
ジョズが指したのは、胸の入れ墨の少し上に並ぶ3つのエメラルド。確かにそこにゆぅの気配があった
「やっぱり、ダメだよい!」
マルコはザブザブと膝まで海へ入っていく
「何してやがる!」
「来んじゃねぇよい!....ゆぅが....どんどん小さく弱まってんだよい」
やがて膝から崩れ落ちたマルコは、再び不死鳥の姿に戻る
「へっ....いつもなら、海に浸かって、人に戻るのによい....反抗してる、中の海と違って、外の海は、ちゃんと分かってるよい」
その水に濡れた色は、空の青ではなく....
「ゆぅが消えずに、俺の中に、いられるためには、この姿じゃねぇとよい....奪われた分の力も、ゆぅにやれて、一石二鳥だよい」
かと言って、海に染まった青でもなく....
「だが、それじゃあお前が」
「ゆぅと、約束、したんだ、俺は消えねぇよい....悪ぃが、誰か、陸へ、引き上げて、くれよい」
空と海が溶けあったような群青色だった
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