海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
望み
半月を見送り、昇る朝日を迎えて
海を見ながらその時を待っていた
砂を巻き上げる羽ばたきとともに、アタシの背後に降り立った音
隣に腰を下ろした気配はそのまま後ろへ倒れてしまい....海を見ているアタシと、空を見ているマルコは、まだ顔を合わせないままだった
「お前の夢はなんだよい」
「アタシの....夢?」
唐突に開かれた口からは、思ってもみなかった質問が飛び出した
「パートナーの夢がアタシの夢だと思ってたから....そんなの考えた事もなかった」
「夢じゃなくても、望みは?やりたい事とか欲しい物とか何かあるだろい?」
やりたい事は勝手にやるし、欲しい物だって....ふふっ、マルコの持ってるソレ以外ならなんだって手に入れてきた
「アタシの望みは海賊たちが自由に生きていくこと。アタシには海と月と酒があればいいわよ」
「そうじゃねぇよい!」
飛びあがりそうな勢いで起き上って、アタシを睨みつけるように怒っているマルコ
アタシは何をそんなに怒っているのか分からず、キョトンとしてマルコに首をかしげた
「お前、また、そんな事、言いやがって....自分だけの事を考えろよい!」
マルコを縁取るように。空気が怒りで青く揺らめいたのを見て、ゆぅの口からこぼれた言葉
「....そら....空....」
「空?....飛んでみてぇのかよい?」
コクンと頷いたゆぅに、ニヤリとするマルコ
それは、女王としての望みではなく、間違いなくゆぅ自身の望み....しかも、今すぐにでも自分が叶えてやれる望み
「じゃあ、早速行くよい?」
立ち上がると同時に不死鳥へと姿を変えているマルコ
この姿であることなら決着をつけてきた
「でも、今のアタシじゃあ、海の力がどうなるか。それに....」
「ダメなら、人に戻って落っこちるだけだよい。海に落ちたら拾ってくれるんだろい?いいからさっさとしろよい」
そのぶっきらぼうにも聞こえる言葉には温かい優しさが溢れていて。ゆぅがじっと見つめるのは、不死鳥の向こうにいるマルコ
膝を抱えていた腕を解き
両手を砂浜につける
―― 白い髪が海の色に ――
膝を砂浜につき両手を離して
上体をゆっくりと起こしていく
―― 紅い瞳が海の色に ――
膝立ちから踏み出す
右足、左足
立ちあがったゆぅはすっかり深海の色に染まっていて....マルコに手を伸ばした時、『シッポ』が切れて、砂浜にパサリと落ちた
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