海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
ニワトリ
昨晩遅くにゆぅが来た気がしたのは、俺も同じだった。もっとも、そう思ったのはマルコが話し始めた時だったが
あの近寄り難い雰囲気を感じたわけじゃねぇ
ひと月ほど前、金の事で怒って飛び立ったマルコを見て「不死鳥」と呟いたゆぅを、不意に思い出した時だったからだ
「お前、不死鳥だよな?」
そんな事を考えていたら、隣でメシを食うマルコにそう聞いていた
「アァ?突然、何を言い出すんだよい。変なモンでも食ったか、ジョズ?」
「あ、いや....」
「ニワトリにでも見えたんじゃねぇか?」
「髪を逆立てりゃ、いけそうだな」
ヤジが飛び、笑いが起きたところを睨みつけてマルコが立ち上がる
「んだと?これのどこがニワトリだってんだよい!」
不死鳥に変わったマルコの姿を見て、ジョズの脳裏に再びあの時のゆぅが浮かび上がる
....まさか。いや、少しでも可能性があるのなら
「おい、マルコ。変わったついでだ。その辺にゆぅが潜ってないか、見てきたらどうだ」
言い合いを続けていたマルコはジョズに目を向け、急にそんな事を言い出した真意を探ろうとするが....
「そりゃあいい、ゆぅに来させてばかりだもんな」
「昨日はマルコが遅かったんだしよ」
「迎えに行ってこい!」
「海ん中に引きずり込まれんじゃねぇぞ」
騒ぎだしてしまった仲間たちを抑える案も浮かばず、舌打ち一つ残して海上へと飛び立った
素直じゃねぇ!という笑い声を下に聞きながら、浜辺近くを旋回するマルコ
そうじゃねぇ....ゆぅは俺を避けようとしてるから....見つけられるわけがねぇんだよい
だから、来なきゃなんねぇ理由を無理矢理作って、あとは待っててやるしか....
キラリと光った水面に目を向けても、それは太陽のカケラ。俺のエメラルドが光ってくれりゃあ、飛びこんででも掴まえに行くものを
海の底から見上げる水面に散らばる太陽のカケラ。そこに現れて誘うように舞う空色の彗星は、同じ空の色に溶けることもなく、アタシの目をくぎ付けにする
少しだけでいい....空を掴みたくてゆらりと伸ばした腕
チラリと向けられた視線と目が合って、慌てて胸の前に腕を抱えてしまい込めば....手に重なったエメラルドの温かさに、胸がギュッと締め付けられた
浜辺へ戻る光に....アタシは何も考えられず、ただ吸い寄せられていった
5分と経たずに水際に降り立ったマルコに文句を言う仲間たち
「もう終わりかよ」
「やる気が感じられんな」
「何度も立ち上がる不死鳥サマが、えらいヘタレようだぜ」
「やっぱりニワトリなんじゃねぇか?」
「空飛ぶ空色のニワトリな」
広がる笑い声はマルコをたきつけるためのもの。それでもマルコはふて腐れるように、姿を戻すこともなくそのまま立ち尽くす
「ニワトリじゃない....不死鳥よ」
アタシはその背中に顔をうずめて抱き着いていた
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