海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
出なおし
ふと見上げると、海面に輝く太陽の光の粒が小さくなっていた
そのまま海底に寝ころべば、西の方向にオレンジ色の塊が波に揺られている
自分たちの事も考えてと言った
アタシのためと偽って
海を越えていく力を試した
みんなだって大丈夫だった
アタシだって行くあてがあるわけじゃない
でも、いつまでもここにいるわけにはいかない....アタシはいつまででもいられるけど、みんなの時間には限りがあるから
海面に踊る太陽の粒がなくなり、オレンジの小さな塊だけになったとき、空色の彗星が流れていった
―― 明日も、ここへ
そうだ、明日って言っちゃったんだった
夜になっちゃったら、どこまでが今日かわからなくなるから、今から少しだけ
姿を見せるだけでいい。それで、約束は....
「遅ぇよい!月明かりもねぇんじゃ、ろくに顔も見えねぇよい」
浅瀬まで潜ったままで、そっと立ちあがったはずが、すぐに見つかっていきなり怒られた
「まさか、一日中アタシを待っ....」
「そんなヒマなヤツはいねぇよい!俺たちは今、大事な事を話してんだ、明日、出なおせよい」
来いって言ったから来てあげたのに、もう帰れって?っていうか出なおすって何よ!
「ああ、俺は明日はいねぇから明後日も顔を出せよい」
ちょっ?
牽制のために少しだけ纏っておいた王威に、みんな気圧されてるっていうのに、なんでこの男は....
いい。もう、約束は果たした。おかしなペースに巻き込まれないうちに、海へ戻ろう
心の中の大騒ぎを微塵も表へ出すことなく、ゆぅは背を向けた
「おい、ゆぅ!明日と明後日の返事はどうしたよいっ?」
バカじゃないの。昨日あんなにすがったりするから....しょうがないから今日は来てあげただけよ
大事な話とやらができるんなら、それこそ大丈夫ね
歩き出したところで、別の声がかかる
「あ、あのっ、そのっ、俺たち、みんなに言ったから!ゆぅを理由に、これからを考えちゃダメだって!みんな、ちゃ、ちゃんと....大丈夫だから!」
―― 大丈夫ってなんだよ
―― じゃあ、お前ダメなのかよ
―― いや、大丈夫だけどよ
どこか震えるような声とまわりの囁き声に、そっと笑みを浮かべるゆぅ
よかった。なら、もう来なくて....
「だから、聞くだけでいいから!少しの時間でもいいから!明日、き、来てくれ....来て欲し....来てください!」
....自分が言ってだめなら、他の子に頼ませるってこと?そんなことしたって....
「お前、聞いてなかったのかよい?俺は明日と明後日って言ったろい?」
「マルコ隊長が言っても聞いてねぇみたいだから!」
ピタリと歩みを止めたゆぅ
「明日は、もう少しだけ早い時間に来るわ」
「今度は寝坊すんじゃねぇよい。じゃぁ、また、明後日だよい」
それには答えず戻っていくゆぅ
最初から返事を期待などしていなかったように、マルコも仲間たちの元へ戻っていった
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