海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
遊び
朝日を見ながら浅瀬でぼーっと座り込んでいるゆぅに、パシャパシャと近づく水音
「まさかとは思うが、二日酔いか?あるいは海に帰れなくなったとか?」
「ううん、ちょっと考え事....そうだ、ビスタ、元気?」
朝日を見たまま答えるゆぅ
「あの程度の宴、まったく問題はない」
「なら、ちょっと遊んでくれる?」
そう言いながら振り返ると、ゆぅは短剣を抜いて「これで」と小さく振る
「ほぉ....別に構わないが、ゆぅが相手では『遊び』というわけにも....」
「そんなに身構えるほど調子は戻ってないわよ。銃弾をさばけるくらいにはなりたいと思って。つまり今は、それ以下ってこと」
短剣に目を落とし刀身を握ったゆぅは「痛っ」と手を離す
「大丈夫か、ゆぅ?体を慣らすなら剣は借りればいいんじゃないか?」
ゆぅの腕から力が抜け両手が海に浸かると、掌の傷がすぐに癒えていく
「....父上、母上、このくらいは許して?アタシ、自分の身くらい、自分で守りたいの。そうじゃないと、アタシ、いつまでも海から離れられない」
海に浸かったままの短剣がぼんやりと光り、刀身がゆっくりと伸びて長剣となる
「アタシの血じゃなくて、海と一緒にってこと?ありがと。それでも十分よ」
30分ほど剣を交えると、ゆぅはくたりと砂浜に座り込んだ
「ふぅ....ありがと、ビスタ」
手を差し出してきたゆぅに、ビスタは片膝をついて握手に応える
「いやいや。美しい剣さばきだった。良い物を見せてもらった」
「体力はまだまだだけど、なんとかなりそうね。誰か銃で....あ、イゾウ、お願い!」
「そんな役はごめんだな。このニセ酔っ払いに何されるかわかったもんじゃねぇ」
イゾウの隣に立つマルコは、グラスを右手に、さらに左手には酒瓶を3本持ち、先程からイライラとしながら酒を口に運んでいる
口からちょうど離したグラスを持ったまま、右手をイゾウの肩に回すマルコ
「おい、よぉく狙えよい?」
「やらせんのかよっ!どこを狙えってんだ!」
「....ビスタに決まってんだろい?」
「「「おいおいおいおい....」」」
....やっぱり酔ってねぇ
「ふふっ。でも、まぁソレもありかもね」
ビスタの手に掴まって立ちあがると、ゆぅはビスタを背にイゾウに向かう
「アタシがさばききれなかったら、自分でなんとかしてくれる?」
「やれやれ、当たりに行くんじゃないぞ?」
「イゾウ、一発はビスタにもう一発はアタシに撃ってちょうだい。ここを狙えばいいわ」
剣を肩に乗せ、不敵な笑みで指し示したのは胸の真ん中
「ここなら当たっても守ってくれるわ、マルコのエメラルドが。ね?」
「なっ?バカ、止めろよい!」
ゆぅに言いながら、イゾウの肩に回した腕に力が入るマルコ
「マルコ、邪魔してイゾウの手元が狂う方が困るんじゃないの?」
「....フッ、言いだしたら聞かねぇんだったな?おい、マルコ、離せ」
両手の銃で狙いを定めるイゾウ
誰もが息を飲んで見守る中、2発の銃声が響き、ゆぅが剣を一振りした
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