海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
宣戦布告
翌朝、朝日とともに現れたゆぅは、深海の色に染まった髪と瞳をしていた
「そうか、海を持っていけばいいな」
シャンクスの前に立ち止まり顔を見上げたゆぅを、離れたところから見守る白ひげ海賊団
「....ごめん、行けない。怖いの」
「怖い?....俺か?船か?海か?」
「海から離れるのが怖くて....どうしても、髪を離せないの」
シャンクスはゆぅの後ろ髪の束を手に乗せた
「....そうか。きっかけになればと思ったんだが、まだ早いってことだな。まぁ、焦る必要はないさ、他のこともな」
「うん。ありがと」
「俺がパートナーだったら、きっと連れ出してやれたんだろうな。力が戻ってみたらマルコが....」
「それはないの、絶対....万が一シャンクスがパートナーになるなんて事があっても、マルコは....マルコだけは」
「俺も万が一かぁ、残念だな」
おどけて見せたシャンクスは、うつむいてしまったままのゆぅにやれやれと息を吐き、頭をなでる
「そんなに思いつめるなって」
「アタシ、―――――」
その言葉に驚いて目を見開いたシャンクスだったが、優しく微笑んでゆぅの涙を拭う
「それはそれでいいんじゃないか?マルコの頑張りが足りないだけで、ゆぅが泣いたりする事じゃない」
「でも....」
「だぁーーっ!宝の持ち腐れかよっ。くそぉ、くやしいから教えてやらねー」
シャンクスはゆぅを胸に抱き込んで、遠くのマルコにベーっと舌を出した
「ったく、何ガキみたいな事....」
「しょうがないだろ。海賊がいつまでもガキなのは、誰のせいだと思ってんだ?」
「あ、アタシのせいって言いたいわけ?」
「ハハッ!その調子で元気にやれよ」
ポンっとゆぅの頭を叩いてシャンクスは船に乗っていった
赤髪の船を見送るゆぅに俺達はゆっくりと近づき、遠く小さくなるまで共に並んで見送った
「あの時と同じ、海の色だねい」
髪を梳く俺の方にゆっくりと振り返りながらゆぅの口から出た言葉に....
「行かなかったのは、まだ海から離れられなかっただけ。シャンクスだったからでも、ここにマルコがいるからでもないわ」
「フッ、構わねぇよい」
強がりではなく、当たり前のように出た返事。驚くゆぅの体にニヤリとしながら腕を伸ばす
「今に見てろよい」
抱き寄せた耳元に告げたソレは、確信にも似たゆぅへの宣戦布告だった
甲板に並び立ち、シャンクスとベンは小さくなっていく島を見る
「残念だったな、お頭」
「ゆぅは不死鳥を見てるんだそうだ」
「ん?マルコは違うんじゃ....」
「まあな....マルコが持ってる宝は、両刃の剣みたいなもんだ。傷つけるのがわかってるゆぅには抜けやしない」
もし、剣を抜かせて、傷を治してやれるなら、お前の勝ちだ....ゆぅも変わるのかもしれない。ヤツの言ってたようにな
シャンクスはもう見えないはずのマルコを見ながらゆぅの言葉を思い出していた
――アタシ、マルコを見れないの。どうしても....マルコの中にある『不死鳥』を見てしまう....だから、マルコは、違うのよ
「帰還」
End.
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