海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
約束
歌い終わり腕を降ろしたゆぅは、そのまま墓標を見上げ続けていた
彼の息子たちの涙を邪魔せぬよう
涙に乗せて想いを海へ還せるよう
集まった大きな感情の波は、やがて落ち着き海に消えていった
見届けたかのようにゆぅは静かに振り返って海辺へと歩き始めた
その後を黙って続くマルコ。他の者たちも2人についていく
「母上の言葉を伝えてくれてありがと、シャンクス。あと、あそこから連れ出してくれたことも」
「なぁに、事のついでだ。で?」
「エメラルドはもう落ち着いてるから大丈夫よ。あとは海で治すわ」
苦笑しながらもシャンクスが頷くと、ゆぅは海へ向かった
「ちょっ....ゆぅ、待ってくれよい」
振り返り、ゆぅは困ったようにマルコを見る
「ごめん、今はもう...」
パートナーだったオヤジが死んだ今、俺達とはもう関係ないということか....そう思い、うな垂れるマルコ
「体力が持たないの....少し休ませて欲しい」
ゆぅが続けたその言葉に、えっ?と顔を上げる
「シャンクス、今日の月は?」
「あー、おとといが満月だったかな?」
「ならいい。夜、月が上がったらまたここへおいで、マルコ」
ゆぅはうっすらと口元を緩ませる。もう、笑顔を作ることもつらいほど消耗しているようで、このまま消えてしまうのではないかと思うほどだった
「わかったよい。ありがとよい」
その言葉には答えることなく、ゆぅは海へと入っていく。が、ほんの4、5歩、海を歩いたあたりで、ゆぅは急に力を失い倒れてしまった
マルコは思わず波打ち際まで駆け寄ったが、そこにゆぅの姿はなく白いワンピースが漂うだけだった
「溶けちまったか」
ワンピースを拾い上げながらシャンクスが呟く
「どういうことだよい」
「そんだけしんどかったってことだ。大丈夫、月が出りゃ戻ってくるさ」
約束したんだろ?と言ってニカッと笑うシャンクスにうなずくと、マルコは海に目を向け「ゆぅ」とつぶやいた
結局、誰一人海岸を離れることないまま、夜がやってきた
月はもう、頭上にまで上がっているというのに、ゆぅはまだ姿を現さない...それでも彼らはただじっと待っていた
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