海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
帰還
静かに開いた医務室のドア
身じろぐ事すらなく眠り続けるゆぅの髪が、窓からの潮風で舞い始める
傍らに座っていたシャンクスが立ち上がり、入り口に立つマルコの肩を一つ叩くと、そのまま外へ出てドアをそっと閉めた
出口を失い止まった風に、ゆぅの髪も動きを止めてふわりと落ちる
頬にかかったその髪を掬って、そっと顔の横に降ろしたマルコの手。わずかな呼吸に合わせ上下するゆぅの胸のエメラルドを3つ順に辿る
見ても触れても、何の変哲もないエメラルド。呼ばれる気もしなければ、ゆぅが海に見える事もない
「ゆぅ....」
椅子に腰掛けて名を呼んでも変わる事のない、作り物のように静かな寝顔
お前が連れて来たのだからお前が面倒を見ろと、赤髪はゆぅの側にいる理由までも与えてくれた
それでもできる限り家族たちの事をしたいと思うものの、彼らもまたゆぅのためにと、マルコを送り出してくれる
隣で寝顔を眺める事しかできないのだが
もどかしく、苦しく、切なく....それでもどこか、微かに幸せな時間
「着いたぞ、マルコ」
長いような短いような航海の末にやって来た島....オヤジとエースが眠ることになる島
ゆぅはまだ眠ったままだった
埋葬が終わる頃には、改めて感じた失ったものの大きさに、誰もが涙を流していた
オヤジに別れを告げ船に戻っていく赤髪に、ただただ頭が下がるのは皆同じ
船の側に待つ仲間の元に戻ったのを見届け、オヤジの墓標へ振り返った時
視界の端に白い鳥の影が舞うのを見た
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