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海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
勝者
トンッと胸にあたるゆぅの額


「ゆぅ?」


震えてる?まさか、怒っ....あのガキっ!ここまで耐えてきたのにどうしてくれる!....違いねぇ、生まれ変わってもあの野郎は!


「ふふっ、やだもう。背中押されちゃった」


茂みを睨みつけていた視線を胸元へ落とすと、ゆぅがはにかんだ笑顔を向けている


先ほどまで懸命に余裕を装っていたマルコ。いや、それはこれまでずっと。余裕がなくなれば悪態をついて怒らせてきた


「なるほどね。みんなこういう気持ちだったのね」


それが、子供たちの言動に反応したそのままの素直さでゆぅの笑顔を見てしまい、赤くなっていく頬を抑えきれずにいた


よりによってそんな笑顔しやがってよい。まったくこっちの身にも....


「大好きよ、マルコ。愛してる」


心を落ち着けようとしていたところへの唐突な言葉に、マルコの心臓は握りつぶされ血液はすべて頭に登っていった


「お、おま....」


慌てるマルコに構わずゆぅはしゃべり続ける


「今まで、みんな言ってくれたけど、アタシはよくわかんなくて。だって、『大好き』だったんだもん」


宝物を見つけた子供のように目を輝かせて


「でも、今わかったの。これが『愛してる』なのね!ふふ....マルコ、愛してる!大好きだけど、愛してる!....ふふふ、なんだかとっても嬉しいっ」


そう言ってマルコにぎゅぅと抱きついたゆぅ。顔が見えなくなり、やっと頭が回り出したマルコはゆぅの言葉を反芻する


今までわからなくて、今わかった....


そう言えば、遠い昔あの男がそんなような事を....揶揄ではなく、本当に知らなかったのか


『お兄サマ筆頭だったてめェが、家族愛を越えられんのかァ?JOKERのように見守ってやるのが関の山だろ。賭けてもイイぜ、フッフッフ』


その賭け、俺の勝ちだよい


ニヤリとしてゆぅを見下ろすマルコ


「初めて『愛した』からわからなかったのかよい。『同類の情』なんて適当な事言いやがってよい」


意地の悪い声を出してやれば、返ってくるのは、ふくれっ面


「ま、俺にとっちゃぁ、もう同じ事だよい。連れ去られたあの日から、お前を愛してる事に気づいたんだからよい」


見る見る赤くなるゆぅの顔


「な、なんか、わかってから言われると、すっごく恥ずかしいような照れるような....マ、マルコもアタシとおんなじ『愛してる』?」


「さぁ?もう一回ちゃんと言ってもらわねぇとわかんねぇよい」


「なにそれ!なんか、ズル....くない?........マルコ、愛してるっ」


精一杯、声を絞り出して俯いたゆぅにマルコはククッと笑う


「どうやら俺の方が愛してるようだよい」


「そんっ....」


バッと振り仰ぎ文句を言おうとしたゆぅの口をキスで塞ぐマルコ


すぐにスッと離れたマルコを凝視するゆぅの驚いた表情に、マルコはフッと笑って髪を梳くように頭をひと撫でする


「そろそろ、おしゃべりはおしまいだよい。言葉じゃ伝わりきんねぇだろい?」


力強く優しい切れ長の瞳に、ゆぅは嬉しそうに顔を和らげてそっと目を閉じた





長いキスの後、不死鳥に姿を変えたマルコ


「お前も準備しとけよい。やっと一つになってやれるよい」


顔を輝かせて海際へ駆け寄るゆぅを尻目に、マルコは子どもたちの茂みへ舞った。子どもたちの大きな目がこぼれ落ちそうなほどに見開かれている


「坊主、とりあえず礼を言っといてやるよい。イイ男になれよい」


男の子は「おう、まかせとけ!」と親指を立てて笑った。隣で女の子が海を指して叫ぶ


「おねぇちゃんが!」


「ああ、大丈夫だよい。呪われるほど海に愛されたお姫サマだからねい」


「じゃぁ、さっきのキスで『のろい』はとけたのね!あんなにキレイな、うみのいろ!」


キャーと手を取り合って喜ぶ女の子2人に面食らいながら、「そんなとこだよい」と言い残してゆぅの元へ舞い戻るマルコ


抱き合った2人は一つになり、群青色の鳥が海の向こうへと飛び立っていった




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