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海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
最後の一人
さらに数十年





「あの時、一緒だったヤツは....お前で最後なんだろうよい....」


1番隊で最も若かった隊員の最期を偶然見届けたマルコ。全員を確かめられるはずもないが、家族が皆、海に還ったのだと分かった


これまでの別れも残念に思ったし、特に親交の深かった者には寂しさも感じた


それでも、縄張りの島にはまだ古くからの顔なじみも残っているし、新しい知り合いもあちこちにできた




が、この喪失感は....自分が全てを失ったというよりも、むしろ自分が世界から失われてしまったような気がした


雑踏の喧騒すらどこか遠く聞こえ、街を歩く自分が別の次元にいるような....自分がここにいていいのかすらわからなくなる




いつの間に迷い込んだのか、隔離された入江に出たマルコは、砂浜に寝転び波の音を聞きながら、ただただ空を見つめ続けた


空すら遠い。本当に自分はあそこを舞い飛んでいたのだろうか


昼夜もわからず、夢か現かも定かでない時間が過ぎていった










何度か来た事のある島だった。アタシのお気に入りは小さな入り江


陸側は森に囲まれて誰の目にも触れることなく、海側を囲む岩礁はここを隠すだけでなく、波の音を際立たせてくれるから


岩の間から顔を出せば、砂浜に倒れている人影....マルコ?寝てんの?


驚かせてやろうと、そぉっと近づいていったら....マルコは、ここからいなくなりそうになっていた




家族や大事な誰かを亡くした人が、心の傷の痛みに耐える時。そこで人は「自分の死」にも向き合って、そして一歩を踏み出せる


だけど、アタシたちは違う
だから、言ったのに

―― 死なないっていうのは....やり切れない孤独を山ほど抱えて、一歩間違えれば生きてないのと同じ事になるのよ!




不死鳥の姿でいるわけでもないのにマルコがほとんど歳を取らないのは、きっとあの時アタシが温めようと残した想いのせい。ミホークが「海と太陽」って言ってたモノ


だったらきっと、アタシがそれを取り出せば....マルコの時間は再び動き出すはず




アタシは........


アタシには海がいてくれるから大丈夫




すぐそばに座っても、やっぱりマルコは気がつかない。遠い遠い自分の中で、独りで膝を抱え込んでるに違いない....アタシがそうだったように


想いを取り出すために、マルコの胸に手を当てる。鼓動が高くなって溢れ出してきた、あの『同類の情』........イヤだ....アタシは堪らずマルコの顔を見た




イヤだ....今、マルコがいなくなるのは


今も。これからも。ずっと....








「マールーコっ!」


覗きこんだアタシがちゃんと笑えてたかなんてわからなかったけど




ぼやけていた世界をさえぎり飛び込んできたのは....ああ、俺はまた、見失いかけていた宝に救われた........ゆぅ....ゆぅの笑顔


いともたやすく戻った世界とのつながりが、溢れるもので滲んで見えた




戻ってきてアタシを見たマルコが、安心したように嬉しそうに笑ったのを見て....思い出したのはマルコが言ってくれた言葉


―― 俺にはゆぅがいるよい


それがアタシの何かを溶かした





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あきゅろす。
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