海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
宮廷道化師
「ゆぅさん....」
少年を抱きしめ海に座り込んだままのセバスチャンがゆぅを見上げて言葉を詰まらせる
「久しぶり、セバスチャン。もう体もすっかり元通りね。素敵な奇跡も起こってなによりだわ」
「この子は物心のついた頃には、話すどころか何の意思も示さなくなっていて....奇跡と言うなら....ありがとうございます」
「たいしたイタズラじゃねェか、ソイツを動かしやがった」
「撃ってたらホントに壊れてたわよ?お礼ならマルコにね。アタシじゃ間に合うか微妙だったもの」
「『その子を助けて』って聞こえちゃあよい。不本意ながら、ドフラミンゴまで助けちまったよい」
「ありがと、ちょうどいてくれてよかったわ」
ふふっと笑うゆぅは少年の視線に気づいて、ん?と笑いかける
「....ゆぅ、姉ぇ?」
「やだもう、ホントにピーコックにそっくり!ドフラミンゴもこんなにかわいかったのよ?」
「ゆぅさんの名前もちゃんと覚えていたのですね。まったく8年も心配をかけて」
「そういえば、何でアタシの事を?」
「枕元にゆぅさんの手配書を貼って『いいか、俺を忘れてもゆぅ姉ぇだけは忘れるな』と、ドフラミンゴ様がよく言いきかせていましたので」
「余計なコト言うんじゃねェ!」
ゆぅとセバスチャンはクスクスとあの頃のように笑い合う
「忘れるなって、写真だけで会ってもないのに?......ふふっ、優しいのね、ドフラミンゴ。この子は彼ね?」
「アァ。だから意思のねぇ人形なンだと思ってな。この島に来ても変わらねェなら、どっちかの魂しか存在できねェって事だろ」
「だから死のうと思ったの?」
「バカ言ってんじゃねェ。俺が人サマの為に死ぬわきゃねェだろうが。暇つぶしの運試しをしただけだ」
「俺の知らねぇ話ばっかしてんじゃねぇよい」
ポソリと呟いたマルコの声を聞き逃すはずもなく、ゆぅはプッと吹き出す
「マルコもしばらくぶりだったわね。それに知らない訳でもないわよ。セバスチャンはこの子の事を?」
「産まれてすぐに『コイツの名前はジョーカーだ』と名付けられましたので薄々とは」
「JOKER?このガキがあのJOKERだってのかよい!」
「もう、あのJOKERじゃないわよ、完全にね。でも意志の強さはアタシが保証するわ、これからはずっと自由に生きなさい」
ゆぅは少年、ジョーカーを包み込むように抱きしめた
「おい、しばらくぶりって早速飽きられたのかァ?」
ニヤニヤと聞いてくるドフラミンゴに面倒臭そうな顔をするマルコ
「ほっとけよい。あの島を出た後、3ヶ月くらいウチの船にいただけで、あとはたまに会いに来るくらいだよい」
「フッフッフ、こりゃァ面白れェ。俺も見届けてやりたくなっちまうぜ、不死鳥さんをよ。まだヤってねェんだろ?ぶっ飛ばされンの覚悟でキスくらいしちゃァどうだ?」
「バカじゃないのっ!」と睨みつけるゆぅに「俺も愛してるぜ、ゆぅ?」とドフラミンゴは嗤った
最後にジョーカーをぎゅうっと抱きしめ元気でねと笑うゆぅを見ていたマルコ
「ゆぅは気づいてねぇんだろうがよい....」
呟いたマルコの元にやって来たゆぅは、ニコニコとマルコを見上げて手を取ると、そのまま森へと歩き出す
「案内してあげる。ここがホントのアタシの故郷よ」
わずかに驚いたマルコは、ジョーカーを抱きしめてから変わらないゆぅの瞳の表情に、心の中で呟いた
「寂しさとノスタルジーでいっぱいいっぱいってとこかよい」
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