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海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
歳のない者
「お誕生日、おめでと〜!」


茜色に照らされた甲板に飛び込んできた人物は、両手にコメ酒の瓶を高く掲げてニコニコしている


「ゆぅじゃねぇか!相変わらずだな」


「うん、ジョズもね。お誕生日おめでと」


「......俺は違うぞ?」


「そうなの?でも誰かお誕生日でしょ?こんなにたくさんいるんだし。宴の準備をしてるように見えるけど?」


「誰の誕生日か知らずに来たのか....まぁいい。今日誕生日のヤツにバレねぇよう、こっそり支度してんだ。だから、お前も隠れておけ。祝砲が鳴ったら出て来い」


「サプライズパーティーの、サプライズゲストによる、サプライズプレゼントね」





甲板に歓声があがる。その騒ぎのせいで誰が誕生日なのかはわからないけど。でも、ジョズの隣、アタシの入っている樽の前に立つ事になってるから、出ればすぐに分かる


「お誕生日、おめでとぉぉっ!」


祝砲の合図で樽を壊して叫んだアタシの目の前にいた人物は、見た事がないくらい驚いた顔をして固まってたけど、アタシも同じようにバンザイしたまま固まってた


「お、おまっ....「マルコっ?」」


途端に起こった大歓声にマルコの呪縛が解ける


「お前、そんなとこで何やってんだよい!心臓が止まったよい!俺を殺す気かよい!」


「....何言ってんの?不死鳥のくせに。この程度でくたばるなら、アタシを見届けるなんて到底ムリね」


「んだと!お前こそパートナーでなきゃマトモに仲間も見つけられなくて帰って来たんじゃねぇのかよい」


「違うわよ!今一緒にいる子たちが『祝い事がないなら酒は飲まない』っておかしな子たちだから、『友達が誕生日だから』って出かけてきただけよ」


「それで人数の多いこの船に来たのか。『誕生日』を守るなんて律儀なものだな」


「言っちゃったからには嘘にしたくないしね。ワインじゃなくてゴメンね、ビスタ」


「いやいや、『誕生日プレゼント』なのだろう、それは」


ゆぅは両手の酒瓶を見比べて....抱え込む


「....全部じゃないからね。分けてあげるだけよ」


「なんともケチ臭いプレゼントだよい」


「いらないならあげないから!」




宴が始まり、入れ替わり立ち替わりマルコの元へやってくる家族たち....おめでとうと杯を打ち鳴らすと、すぐにゆぅに向いてしまうものばかりだったが


「そういや、マルコは何歳になったんだ?」


「あぁ?そんなもん忘れたよい」


「やだ、実はもうろくジジイだったの?」


「時の流れは忘れる事にしたんだよい。おんなじ死なねぇババアが俺の若さに嫉妬しちゃあ困るんでねい」


「なぁんですってぇっ!待ちなさいよ!」


「素直じゃねぇというか....マルコはゆぅが相手だと随分とガキ臭くなるもんだな」


「まぁ、ゆぅにはちょうどお似合いだろうよ」





騒ぎに騒いだゆぅは、翌朝仲間の元に戻っていった


その後も偶然思い出したように、一人で、または仲間や友達と一緒に、ゆぅはマルコの前に現れた




いつしかマルコも船から離れて、時おり一人で気ままに出かけるようになっていた


あの月の神殿に入った日から十年後、そんな一人旅で舞い降りた島でまた別の再会をした




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あきゅろす。
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