海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
仲間
「ホントに、船....」
アタシが海に逃げ込んでいた頃、マルコが島から離れていたのは船の調達のためだった
楽しそうに嬉しそうに出港の支度をするみんなを見て、アタシも嬉しくなって....そして少しだけ寂しかった。ホントにちょっとだけだったけど
いよいよ、明朝出港という晩の宴の席でも、誰もアタシがどうするかを聞いてこなかった
アタシの事を考えずに自分の道を考えてと言ったのはアタシ自身なのに、「一緒に」とも「俺たち行くから」とも言われない事に寂しくなるなんて
ううん、「一緒に行こう」って言って欲しいんだ、アタシは。今までなら旅立ちはただただ嬉しい事だったのに、なんで?これじゃ、成長なんてしてない、むしろ....
「昨日からなに泣きそうな顔してんだよい。お前はどうすんだよい」
次々と船にみんなが乗り込む中、マルコが不機嫌そうに声をかけてきた
「え?あの....みんなが一緒にとかって「お前はどうすんだよい」
「アタシは....行きたい、の、かな?」
「かな?って、俺が知るわけねぇだろい!乗らねぇなら邪魔になんねぇように端に寄ってろい!」
あ、そっか。と、ゆぅは戸惑いながらも道を空けようとヨタヨタ足を踏み出す
「で、乗んならさっさと乗れよい!」
パッと振り返って大きく目を見開くゆぅ
「いいのっ?」
「ダメだと言われて聞くようなヤツじゃねぇくせに、なに言ってんだよい。とにかく、ソコは邪魔でしょうがね「だって!誰も何も言わないから!」
「誰もが一緒に行くと思ってるからだろい。いちいち言ってやらなきゃなんなくなったのかよい。お前、『成長』ってのを勘違いしてんじゃねぇのかよい?」
「勘違い?」
「物分かりが良いフリすりゃいいってもんじゃねぇ、ありのままのお前でいて、どこか前と違うところが成長したところだよい」
きょとんとしていたゆぅの表情がみるみる明るくなり、ニコニコと笑う
「そっか。ありがと、マルコ」
それには答えず軽く眉を寄せると、マルコはプイっと後ろを向き船に乗り込んでいく
「ったく、1000年生きたところでそんな事もわかんねぇ....ホントに見た目だけで相変わらずのガキじゃねぇかよい」
「ちょっ!聞こえてるわよ!」
こうしてゆぅを乗せて旅立った時と同じくらいの騒ぎが起きている甲板
いくつめかの島でソワソワとして落ち着かないでいたゆぅに、出港前の船の下でマルコが放った言葉のせいだった
「残りたきゃ残れよい。あいつらをほっとけねぇんだろい?」
「でも....マルコたちと一緒に来たのに。もう、パートナーはやめたんだし....」
「やめたから、我慢して俺たちといるってのかよい?」
「そんなんじゃ....だって、マルコ....」
マルコはアタシがいなくなってもいいの?....なんで、アタシこんな事....
「俺たちは家族だからよい、帰りたくなったらいつでも帰ってこいよい。他のヤツラもだ。仲間になったヤツにも何度でも会えばいいよい」
「アタシに会うのはとくべ「もう、特別じゃねぇよい。女王サマもやめるんだろい」」
アタシは、行っていいんだろうか....決めきれず落としたままの視線。頭の上に置かれた手。マルコの声が静かに降る
「やりたい事を全てやるなら、泣いているヒマはない。全力で生きて、笑いながら死んでゆけ....あぁ、ゆぅは死なねぇんだったよい。じゃあ.....」
「「「笑いながら、生きていけ!」」」
甲板から一斉に上がった声に、溶けるように揺らいだ視界
「約束どおり俺が全部見届けてやるよい」
顔を上げられないままマルコに抱き着いて、零れる涙でその胸を濡らした
「ありがと......行ってきます」
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