海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
黒鷹
「要件はこれで済んだであろう。俺は帰らせてもらう」
砂浜で月の神殿を見送ったまま、ずっと海を見ていたゆぅは、一度ゆっくり目を閉じると一つ小さく息を吐いてミホークを振り仰ぐ
「ふふ、ありがと。かわいい弟子をほったらかしにさせて悪かったわね」
「今はヒマだったのでな。療養中だ」
口に手を当てわざとらしく驚くゆぅ
「ちょっと、アンタ....まさか、早々に弟子をぶった斬ったんじゃ....」
「白と一緒にされては困る」
「アタシがいつアンタを斬ったっていうのよ!ちゃんと我慢してたわよ」
「俺には治せんというだけの事だ」
「アンタに治す力があれば、世の中の剣士はもっとレベルが上がってたでにしょうねぇ。あー、残念」
「では、それを教えてもらおうか」
「....ふふっ、黒のくせに冗談が言えるようになっただなんて、成長してるじゃない」
珍しくフッと笑ったミホークの肩に腕を回すドフラミンゴ
「ゆぅ相手だと楽しそうにしゃべりやがる。なんだかんだ言って、てめぇもゆぅの事気に入ってんじゃねェか」
「白とは相容れぬと言っている」
「アタシだって黒は大好きじゃないし〜」
「嫌いじゃぁねェだろ?」
「まぁねぇ。あ、ドフラミンゴは大好きよ?」
「有り難ェこった。腐るほどの大好きのうちの一人に入れてもらってなァ?ちなみにソイツはどうなんだ?」
ドフラミンゴの指差す方に振り返るゆぅ
「そりゃあ、マルコだって大好きよ........たぶんね」
「そのあやふやさが気に入らねェなァ?....まぁいい。とり憑いてた執念の固まりが取れりゃ、お前もただの特別なお気に入りだ」
「アタシもたくさんのお気に入りに入れて光栄よ?ふふふっ、ただの特別だし安心したわ」
ドフラミンゴの船が近づき、小船が下ろされる
「もう会うこともなかろう。最後に教えておこう。どうせ俺にしか分かっていないのだろうしな」
「遂にストーカーから解放されんのねっ。やっとゆっくり酒場に行けるわ!で、何?最後にどんな本領発揮してくれんの?」
クスクスと笑うゆぅではなく、ミホークはマルコに向かう
「その体の中にコイツの海と....太陽のようなモノが残っている。不死鳥には無用だろうが、コイツがまた中に入れば傷も治る」
「えっ?何、それ!アタシまた鳥になれるってことっ?」
顔を輝かせるゆぅ、顔が引きつるマルコ
「互いの海とエメラルドを持ち合っていれば可能だ。その石の由来は特別のようだが....血を絞り取られたでもしたのか?気の毒としか言えんな」
憐れみの表情を向けられ苦笑いするマルコ
「黒が真剣に心配するときは、ホントに全くの見当違いよね。それより、アタシが海色になればいいのね!」
喜んでドフラミンゴに駆け寄り空の楽しさを力説し始めるゆぅを尻目に、声を落としてミホークが続けた
「海の記憶するゆぅがこれまでの姿だったように、その姿がゆぅの記憶しているものだ。アイツの影響で人のままでも時間の流れは遅くなるだろうが、一つになれば年齢はそこまで戻るだろう」
「それはいい話が聞けたよい」
「だが、今は黙っておくのがよかろう。お前にとってもゆぅにとってもな」
2人はゆぅへと顔を向けた
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