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海の青と月の気持ち 〜 QUEEN
空の選択
「フッフッフ、ホラ見ろ。俺の言った通りじゃねェか。ゆぅは自分の望みを言いやしねェ」


「そんなんじゃないってば....だいたい、マルコだって、普通に歳をとって....」


「ゆぅが俺の中にいた時に何となく分かったんだがよい、この姿でいる間は歳をとらねぇんだろい?」


ゆぅは何も言わないままだったが、ピクリと震えた肩が答えだった


「初めて会った時も、
――綺麗な炎ね....抱き心地もいいし....ホントずっと鳥でいなさいよ

あの別れの朝も、
――ホント、鳥のままなら良かったのにね..

俺にはちゃんと望みを言って....」


「違うっ!それに、悠久の存在になるだなんて、一時の感情で決めていいような事じゃないわ!死なないっていうのは....やり切れない孤独を山ほど抱えて、一歩間違えれば生きてないのと同じ事になるのよ!」


不死鳥の翼を振りほどき背を向けたゆぅは、射抜くような鋭い視線にぶつかった


「ああ、そういう事か。共にありたいのはその男だが、鳥の姿にならねば悠久の時を超えて行けぬと」


「何聞いてんのよ!違うわよっ!」


「フッフッフ、こいつが本領発揮してんだ、違うわけねェだろ?おおかた、『力の一つでしかない不死鳥のままなんて、マルコらしくいられないなんて、そんなのイヤよっ』とか思ってんだろ」


「そん、な....事....」


「誰よりも分かってる俺が言ってんだ、間違いねェさ。アァ、誰ってのにはお前自身も入ってんだぜ、ゆぅ?」


声を出せなくなったゆぅは、首を振り続けるしかなかった


「全くくだらん。話を聞かぬコイツに、いつまでこのような説得じみた事を言わねばならんのだ」

ため息混じりにミホークが続ける

「....だいたい見て分からんのか、その男がいくらか若くなっているのが。お前が何かしでかしたとしか思えん」


「え?」


ゆぅは慌てて振り返り、人の姿に戻ったマルコをジッと見る


「....アタシの知ってるマルコよ?....若くって、どこが....あれ?もしかして、あの頃、の?」


「言われてみれば体が軽いような気がしねぇでもねぇよい。まぁ、その程度なら大人のしかも野郎じゃあ、たいして代わり映えもしねぇだろうよい」


「ついでに、お前は俺のトコに来た時と同じくらいまで『成長』してるぜ?だからこそ俺のモンだと思ったのに、ぬか喜びさせやがって」


「はぁっ?何よ、それ....えぇっ?」


ドフラミンゴに向き直ったゆぅ。コレは、冗談じゃあ、ない....


ミホークを見ればため息をつかれ、家族に振り返れば皆、優しい笑顔を浮かべている


「だから俺が、イイ女になったって言ったじゃないか。成長に気付いてなかったのか?」


コクンコクンと頬に両手を当てながら頷くゆぅ


「私も成長した姿や心を含めて『過去に区切りをつけた』と言ったのだけれど....それよりゆぅ、先ほどの言葉、悠久の時を手にした事を後悔しているのですか?」


母の言葉に首を振り、ゆぅは苦笑いする


「そんなことないわ、母上。どう楽しい時間を作っていくか、同じ事のない世界で飽きる暇なんてないもの。でも、決して人には薦められない。アタシには大好きな海がいてくれるけど....」


「俺にはゆぅがいるよい」


肩に置かれた手の暖かさに、泣きたいような気がした




「でも、アタシにとってマルコは....なのに、アタシのために巻き込むわけにはいかない」


そう、それはできない


ゆぅはその強い意志を、言葉に、瞳に込めて、マルコにまっすぐに言い放った




小さくため息をつき、呆れているように見下ろすマルコ


「一つ勘違いしているようだがよい。誰もお前のためなんて思っちゃいねぇんだよい。自惚れてんじゃねぇよい」


「え....?ちょ....えっ?」




うろたえるゆぅに


「まだやりてぇ事も残ってんだ、ゆぅに四六時中ひっついてるつもりはねぇよい。長生きする必要があるのは、俺の宝は手に入れるのに時間がかかるってだけだよい」


マルコの夢として語られては、言い返す言葉が出るはずもなかった



「まぁ、お前がいつか俺と一緒にいたくなったって言いに来たら、隣にいてやってもいいよい」


ポロリと一粒だけ落ちた涙の理由など....


「ふふっ、滅多にない、姉さまの負けね」


今は悔し涙としておこうと思った




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