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短編集
D




『件名:本当ですか?

 
 僕も、トーマさんとなら気が合うと思います

 もっと、トーマさんのこと教えてくれませんか? 』





絵文字も何もない素っ気ない文。



だけど、何でか俺には画面の向こうの彼が嬉しそうに笑っている様な気がした。



 

──……眠さのせいで、だいぶやられてきてんのかな。





何だかこれ以上踏み込んではいけないような気がする。



これ以上深く関わると、取り返しの付かないことになるかもしれない。


……よくわかんないけど。うん。





だけど、眠いせいもあってか、俺の思考は上手く働かない。


好奇心に突き動かされるまま、メールのやり取りをしていた。





返信して、返信がきて、返信しての繰り返し。

そうしてメールをしていたら、いつの間にか俺はケータイを開いたまま寝てしまっていたらしい。



いつ寝たのかわからないままむくりと起き上がると、時刻は既に朝の8時だった。




「……うわぁー遅刻だぁ!」




穏やかで柔らかい朝日が、カーテンの隙間からこぼれるように洩れていた。


いつもなら爽やかに感じる朝なのに、今はそんなこと思う余裕もない。



口の端に垂れていたよだれを拭いながら、ガバッと起き上がり悲鳴を上げた。



最悪だ。



寝不足で目もしょぼしょぼするし、寝ぐせもひどいし、よだれの跡もあるし。




「起こしてくれよ母さん〜!」



悲鳴を上げながら急いで顔を洗い、歯を磨く。



そして鏡の前で制服に着替えた後、アクセ類を身につけた。


ブレスにネック……あーもうっ、髪はピンでごまかしちゃおうっ。




そうやって見た目だけは取り繕り、めったには使わない勉強机の脇から通学用リュックをひったくる。




「あんたが起きないのが悪いんでしょー?朝ご飯食べる?」


「食べないっ。行って来ます!」



階段の下で待っていた母さんの横を慌ただしく通り過ぎ、玄関へ向かった。




──あああもう母さんのばかぁっ!


そして俺の大バカ野郎〜!





遅刻だけはしたくない俺は、大急ぎで靴をはき、玄関を出た。



遅刻決定じゃんっ!







***

 





「おはよー……」


ガラリと教室のドアを開けた。



──うう……さいあくだ。

学年主任にはこってりしぼられるし、何か悪目立ちしちゃったし。




そうやってよろよろと教室に入っていくと。



「おはよう、橋田(ハシダ)」

「あー…おはよ、佐橋クン」

 

真っ先にクラスの人気者、あんど委員長の佐橋 遥(サハシ ハルカ)が挨拶を返してきた。



うーわ〜、いつ見ても佐橋クン爽やかだなぁ。



中学の時からバスケをやっているという彼は、汗が光り輝いてみえるというマジックを持っていて、男女関係なく人気だ。


なんて言うの?学年に1人はいるリーダー的人気者?


とにかく、佐橋クンは誰に対しても平等に優しくて、面白い。



……まぁ、俺はあんま関わりないけどねー。


こうやって挨拶するくらい?

あんまり喋ったりしないし、遊んだりもしない。


てゆうか俺、休日はほぼBLか女の子と遊んでるからね〜。

男友達ともあんま遊ばないし。



いや、腐レンド達とはよくアニ○イトとか、イベントとかに出没するけどね〜。

あ、とらの○なとかもよく行くよぉ。

腐腐腐。



そうやって俺がBLに思いをはせていると、不意に昨日のことを思い出した。


……うわ〜、そういえば俺昨日ゲイ専の出逢い系に登録しちゃったんだ。


昨日…いや、今日か。今日の夜のことを思い出し、眉をひそめる。



眠かったからって、顔も知らない奴とメールのやり取りまでしちゃったし。


うわぁ、自分きも。



しかも昨日、途中で寝落ちしちゃったから、メール返してないしね。


何てメールきてたんだろ。












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あきゅろす。
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