短編集
B
……とりあえず、冷静に考えてみてすぐに退会するべきだよね。
うん。そうしよう、退会だ。
そう思った俺は、早速退会の手続きをする。
うん、そうだよ、こうすればいいんだよ。
こうすれば、なかったことになる。
そうしてポチリポチリと退会手続きを進めるけど。
……え、マジで?
ケータイ画面に表示された文字を見て、目を丸くする俺。
退会には1ヶ月間かかりますって……。え?何なの?は?
1ヶ月期間とる意味がわからない。
えー……マジかよ……。
何と、退会には1ヶ月かかるということで、直ぐには退会できないようだった。
さいあくじゃん……。
がっくりとうなだれた。
あー、もうやだぁ……。
そう思っていると、またメールが届いた。
どうせサイトからなんでしょ、とげんなり思いながらも、受信ボックスを開く。
俺の予想は当たっていて、それはサイトからのメッセージ通知だった。
「またこの人……?」
そのメールは、最初に届いたヨウって人からだった。
『件名:すみません
ひいちゃいましたか?突然こんなこと言っても困りますよね。
僕、こういうメールを送るの初めてなもので…。
本当に、トーマさんとだったら楽しくメールできそうな気がしたんです。
これでも、勇気を出してメールを送りました。
よければお返事下さい。
いつまでも待ってます』
「…うーん…」
……どうしよう。
メール画面を見詰めながら、首を傾げた。
…でも、どうせ、あと1ヶ月したら退会するしな…。
そう思うと途端に心にゆとりができ、同時に興味が湧いてくるもんで。
俺は、興味本位でぽちりぽちりとケータイをいじくった。
──どうせ1ヶ月したらバイバイなんだし、ちょっと返信してみるか。
くらいの軽い気持ちで、返信メールの本文を打っていく。
リアルガチホモがどんななのかも、興味あるしなぁ。
もしかしたら、とんでもない不細工かもしれないし、腹の出たオヤジかもしれない。
……それはちょっといやだなあ。
自分で考えたことだけど、げんなりした俺はそれでも本文を打った。
できた文に目を走らせ、誤字脱字がないのを確認して返信する。
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