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短編集
G




 晃太は、少しでも早く着きたくて、冬斗の腕を掴み、走った。
「おーい、廊下は走るなー」
 途中すれ違った先生に緩く注意される。
「すいません!」
 晃太は軽やかに走りながら、その先生を振り返り、ぺこりと頭を下げた。
「……晃太」
「ん?」
 階段をだだだだっと駆け上っていると、不意に冬斗が晃太を呼んだ。
「……いや、やっぱなんでもない」
「はぁ?」
 何故か上機嫌に笑った烱斗は、晃太の手を一旦離し、するりと手を握ってくる。
「……ッ」
「じゃあ、急ごうか」
 思わず強張る晃太とは裏腹に、にっこりと笑う冬斗。
 途端に、さっきまで晃太がリードしていたのに、グイッと冬斗に追い抜かれ、リードされる様になる。
「は?わッ、ちょ……」
 急にやる気を出した冬斗に、引きずられる様にして、晃太は廊下を走った。
(何なんだ……)
 前を颯爽と走る広い背中を見詰める。
 冬斗の背中をぼんやりと見詰めながら、晃太は目の前の親友と夢の中の男を重ねていた。




 ──その後、頑張って走ったのも空しく、結局は平井に説教を食らい、晃太の努力は徒労に終わったことは言うまでもない。








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あきゅろす。
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