月の瞳
03
*o・† † †・o*
──数十分後。
ヴラドは綺麗に洗った狼を、広い天蓋付きのベッドにそっと横たえた。
彼の寝室であるそこは大きな窓から月光が差し込んでいて、大変に幻想的だった。
丁寧に洗ってやった狼は見違える程美しく、灰だと思っていた毛色は鮮やかな銀で、ヴラドは思わず感嘆の息を付く。
(やはり、俺の目に狂いはなかった)
くつくつと愉快げにのど奥で笑い、吸血鬼は妖艶な笑みを浮かべた。
ぺろりと赤い舌を覗かせ、舌なめずりをする様に唇を舐める。
その表情は獲物を捉えた獣の様で、ヴラドはそっと狼の頭を撫でた。
ぐったりとした狼はぴくりと耳を動かし、しかし目を覚ます気配はない。
風呂で洗ってやった時も起きなかったのだから、相当深い昏睡状態にあるらしい。
ヴラドはくすりと笑って、狼にそっと唇を落とす。
さて、これからどう可愛がっていこうか。
己の血はもう飲ませた。後は縛りの言霊だけ。
企みを秘めたヴラドの笑みは、月光に晒されて酷く綺麗だった。
コレはもう俺のモノ。
どこにも逃がさない。
ヴラドは優しく狼を撫で、銀の毛並みを堪能する。
少し硬質な毛並みはそれでも手にしっとりと馴染む様で、増々ヴラドは狼が気に入った。
「……」
すると、不意に狼が不快げに呻いた。
くっと目元を寄せて、のど奥を鳴らす。
そして次の瞬間、狼の体に異変が起きた。
「ほう……」
さあぁ、と狼の銀の毛が波立ち姿形が変わっていく。
その様子に感心し吐息を吐きながら、ヴラドはその変化をじっと見守った。
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