01
霧雨の中、二つ瞳が対峙する。
「―――それが、貴方の願いね。」
「…はい、」
雨が滴り落ちる黒髪を無造作にかきあげる、ただそれだけの動作なのにどうしても目を離すことが出来ない。
それは息をのむほど美しく、洗礼されたものだった。
しかしただ一つ、言うなれば目の前にたたずむこの少年…と言うにはまだ随分と若い子供にはやや不相応な動作だったからだ。
「(…普通の子供にはひっくり返っても出来ないだろうな)」
四月一日は、突然自分と次元の魔女―――佑子さんの目の前に現れた異質な子供をじっと見つめた。
それもそうだ。なぜなら先程の話が本当ならば、彼は普通の子供などではないのだから。
「俺を、元の体に――いや、呪を解くためならどんな対価でも構いません。」
お願いします、と、彼―――和泉は音も無く頭を下げた。
「いいわ…貴方の願い、叶えましょう。」
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