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Re1:The first sign
Black and White



 なぜ。
 どうして。

 あたしは返ってくる事のない問を、幾度となく繰り返してきた。

『アリィ!!あんたレックスに一体何したのッ!』

『あたし何もしてないっ!アイツがかってに泣いてるだけだもん!!』

『何もなくてあんな風になるわけないでしょ!どうしてあんたはそう我儘なの!?』

 母様も姉様も使用人達も。
 みんな口を開けば“レックス”の名前を出す。

 何で、みんな余所者を簡単に受け入れるの?
 あんな得体の知れない奴を、どうして家族として見れるの?

 エンジ達に苛められた後、アイツは家に帰るなり泣きながら部屋に閉じこもってしまった。
 アイツの部屋の外では母様や使用人達が声を掛けているけれど、反応が無いらしい。
 姉様はあたしの所為だって決め付けて、頭ごなしに叱った。

 段々、悔しくなってきたんだ。
 あんなヤツの所為であたしが叱られる羽目になってるんだから。
 だってエンジ達が勝手にアイツを苛めたんだから。
 あたしは悪くない。
 悪くない、のに。

『う"ぇええええぇぇぇぇん"!!!!!!』

 声を上げて泣いた。
 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって、みっともない泣き顔だったと思う。

 皆、レックスの心配ばっかり。
 誰もあたしの言葉なんか何一つ聞いてくれない。

 何で、何で?
 あたしの言葉を見てくれないの――…

『アイリス』

 その時、凛とした綺麗な声が耳に入った。
 あたし名前を呼んだのは、あたしの最愛の人。

『かあさまぁあっ!!』

 全力で走って抱き付けば、母様は優しく包み込んでくれる。
 母様はいつも温かい。
 きっと母様の腕の中では、あたしは素直になれるのだ。

『かあさまはあたしのなのに!!アイツにあげたくないよぉおっ!!』

 まるで赤ちゃんに戻ったみたいに泣いてやった。
 呼吸が上手く出来なくて、頭が痛くて、顔中熱くて。
 自分ではどうしようもない醜態を晒しても、母様は冷静だった。
 あたしの髪を梳きながら、女神のように頬笑んだ。

『嬉しいわ、アリィにこんなにも愛されて。私は世界一幸せな母親ね』

 あの時の母様の温もり。
 優しい声や表情を、あたしはまだ憶えている。

『私もね、アリィが大好きなのよ。私の大切な宝物だもの』

 今思えば、母様の宝物はあたしだけじゃなかった。
 きっと父様や姉様の存在も、母様にとって宝物だ。

 使用人達も、勿論レックスも、母様の大事な家族だから――…

『ねぇ…アリィ』

 なぜ。
 どうして。

 あたしは“母様の一番”に拘っていたのだろうか。

『大事なお話があるの』

 きっと、あたしの一番が母様だからだ。
 この時まだあたしは、知らなかったからだ。





 あたしが母様に、
 どれほど愛されていたのかを。






Black and White

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