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‡CRYSTAL‡
不機嫌の理由




セーマはゆっくりと体を起こしてティナを見上げた。

金色の瞳が彼女を捕える。


「リュマノを離れるって…何それ?」

「だ、だって…目的の物は手に入ったんだもの。
保安官に捕まる前に、この街を離れなきゃ」


セーマは暫く俯いて何かを考え始めた。

すると顔を上げて立ち上がり、ティナの横を通り過ぎる。


「ロゼ、どこにいんの」

「え、ちょっと待っ…」

「いいから案内して」


有無を言わさぬセーマは、状況の分かっていないティナの手を引いて、地下室を後にした。





――…バンッ!!


突如大きな音が響き、談話室にいた団員達は一斉に振り向いた。

勢いよく扉を開けたのは、朝からかなり不機嫌な様子のセーマ。

その漆黒の髪は所々跳ね上がっており、寝起きである事は容易に想像がつく。

その後ろではティナが、動揺を隠せない表情で顔を覗かせた。


「ようやくお目覚めか。
それにしちゃ機嫌悪そうだな…。どうした?」

「どうした、じゃない」


セーマは真っ直ぐにロゼの元へと歩み寄った。

周囲ではモークやヒルダが小声でティナに事情を聞き出そうとしている。


「リュマノを離れるなんて聞いてない」

「俺言わなかったっけ?」


ロゼはどこか楽しそうに笑みを浮かべている。

まるで自分をからかっている様なその表情に、セーマは更に眉間に皺を寄せた。


「…この船、今どの辺飛んでるの?」

「ちょうどリュマノの国境付近だろうな。…それがどうした?」

「…忘れ物がある。リュマノを離れる前に取りに行きたい」


セーマは気分を落ち着かせようと、長い前髪を掻き上げた。

さらさらと漆黒の髪が流れ行く。


「ふーん。忘れ物、ねぇ」


ロゼは顎に手を当てて少しの間、考え込んだ。



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