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‡CRYSTAL‡
霧の中の銃声





三人は街の中央にある噴水広場までやって来た。

昼間は子供の笑い声が絶えなかった暖かいその場所も、今は誰一人いない。

噴水に流れる水は水晶によって覆われ、時が止まったかのように流れを失っていた。


――霧が、段々と濃くなっていく。



「こりゃ…ただ事じゃねぇな」

「街の人達は何処へ行ったの…?」


嫌な予感ばかりが募り、三人は困惑した。



――…その瞬間。




「っ、危ない!!」

「きゃっ!!?」


――パアァァァンッ!!



とてつもない殺気を察知したアリアは、ティナを庇って地面へ倒れこんだ。

同時に響き渡る銃声。

三人は驚きながらも、殺気のした方に視線を向けた。




「っ…ダイス…?」


そこには、先程まで懸命に探していたダイスの姿。

だが彼は何処か虚ろな表情で、静かにこちらを見つめている。

その手には、ティナを狙ったと思われる短銃ネメシスが握られていた。



「ダイスっ!!お前何すんだよ!?」


ロゼが怒声を浴びせても、彼が動じる事はなかった。

そして、再びティナ達に銃口を向ける。



――パァンッパァンッ!!


ロゼは魔剣ヴァーツォルドを抜き、ティナとアリアを庇うように前に出た。

その刀身を盾にし、弾を弾く。



「…様子がおかしい」

「っ…あいつ、俺の声が聞こえてねぇみたいだ!」



ふと、発砲が止んだ。

急に辺りが静まり返った事を不審に思い、彼らはゆっくりと伏せていた顔を上げる。



銃を持つ腕をだらりと下げたダイスの隣に、もう一つの人影があった。


段々と視界が霧に慣れる。

ハッキリとその人物の姿を確認したティナは、ゾクリと背筋を凍らせた。



「――…どうして…此処に…っ」



白亜の髪、白亜の瞳。

背中に生える、翼のような影。

氷のように冷たく笑う、その人は――。



「――…会いたかったよ、ティナ」



シエルの姿をした、始祖ヴァリアスだった。






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あきゅろす。
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