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‡CRYSTAL‡
凍れる街並み






――その時だった。



「おい!!外見ろ!!」


カウルの突然の大声に驚き、全員は指された方に視線を向ける。

窓の外から見える景色に、異常な程の靄が掛かっていた。



「何だよ…あれは!?」


嫌な予感を感じたロゼは、直ぐに外へ飛び出す。

彼に続き、ティナも慌てて小屋を出た。




――眼下に広がる木々の合間に見える、ドールの街。

穏やかだった街並みが嘘のように、そこは白い霧で覆われていた。



「っ…街にはまだダイスがいる筈だ。
様子見に行って来る!!」

「私も行くわ、ロゼ!」

「駄目だ!主は此処で…」


心配するアリアに向かって、ティナは大きく首を横に振った。

その光景を見ていたロゼは、小さく笑う。


「ははっ、こいつは一度言ったら絶対に聞かねぇぜ」

「っ…分かった、だが私の傍から離れるな」

「うんっ!!」


小屋にマグイ達や三人組を待機させ、ティナ達は山道を駆け降りた。

街に近付くにつれ、霧は少しずつ濃くなっていく。

こびり付く細かな粒を振り払うように、懸命に走った。



そうして麓まで降り、街の入り口へ差し掛かる。

そこで三人が目にした光景は――…



「…これは…っ」


クロエ島で見たような水晶が、街の地中から沢山湧き出ている。

殆どの民家は既にそれで覆われ、見る陰もない。

漂う霧の正体は、水晶霧(クリスタルミスト)と呼ばれるものだった。



「どうしてこんな所に水晶が!?」

「街の人は…ダイスは無事なの!?」


ティナ達は街の中を走り、大声で呼び掛けた。

だが、人の気配はまるでない。


まるで氷に包まれたような冷たい情景。

いや、熱では溶かせぬ分、こちらの方が厄介だと言えるだろう。



「一体何があったの…?」



募る不安を抑えながらも、ティナは必死に走った。




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