‡CRYSTAL‡ 伝説 ――昔、よく見た夢を思い出した。 白亜の世界に生まれた私は、周囲から異色の兵器として扱われ、 一度、心臓を止めた。 そして漸く逃げ延びた漆黒の世界でも、同じように利用されかけた。 今度は、声を失った。 ――だけど、 どちらの世界にも馴染めなかった私の前に、一つの光が現れた。 一人泣いていた私の涙を拭って、包み込んでくれた。 優しくて暖かい光。 白でもなく、 黒でもなく、 自分の色を持った光――… 『ねぇティナ、見なよ。 ――今夜は満月だ』 忘れてて、ごめんね。 気付かなくて、ごめんね。 いつも傍にいてくれた光は、貴方だったんだね。 私、決めたよ。 もう簡単には泣かない。 ちゃんと自分の足で立って、歩くんだ。 『人は、前に進めるように出来てる』 『泣いた分だけ、人は笑える』 あの頃の私達には、もう戻れないかもしれない。 だけど私は、貴方を諦めたくない。 どうかもう一度、チャンスを下さい。 貴方に、会う為に――。 第5楽章【伝説】 Fine. ⇒後奏 [前へ][次へ] [戻る] |