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‡CRYSTAL‡
アット・マイ・ホーム
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一方、クルドアの大通りから遠ざかる飛行船の甲板。
小さくなっていく都市を眺めているロゼは、やけにご機嫌な様子だ。



「いやぁー!まさか買い出しで偶然立ち寄った都でティナと再会できるとは、運命だよなぁ!!」

「ロゼ…貴方って人は…」


落胆の声を漏らすティナは、甲板にへたり込んでわなわなと体を震わす。



「どーーしていっつも人の話を聞かずに自分の都合で物事決めちゃうの!!?」

「んな怒んなよ。二年振りだっつーのにカタイなぁ」


ティナの物凄い剣幕にも怯まず、呑気に笑うロゼ。
昔と変わらぬやり取りに、ティナは盛大な溜息をついた。



「落ち込むなよ。過ぎた事は変えられねぇんだし、今はこの状況を素直に喜べ」


そう言って、ティナの頭をくしゃりと撫でるロゼ。
昔からティナは、この大きな掌で宥められると何でも許してしまっていた。

『いいじゃねぇか、過ぎた事は変えられねぇんだし』

楽天的な彼の口癖。



「それより、ほら」


ハッと我に返ると共にティナはロゼに腕を引かれ、船内へ続く扉の前に連れて来られた。



「他にも会いたかった奴らが、いるんじゃねぇの?」


とくん、と胸が高鳴る。

気付けば足は勝手に動き、ロゼが導くより先に飛行船の中へ駆け出していった。

少し古ぼけた壁。
狭くて滑りやすい廊下。
錆びかけた鉄製の扉達。
絶えず鳴り響くエンジン音。

懐かしい風景が、そこには満ちていた。


慣れ親しんだ道程を進み、一つの扉の前でティナは立ち止まった。

斜めに掲げられている表札には“会議室”の文字。
“会議室”という名の“談話室”だ。


ゆっくりと扉を開けば、室内にいた彼らがこちらを注目する。






「…ティナっ!!」






ほらまた。

涙が、出た。







「…カウル、モーク…ヒルダ…っ」




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あきゅろす。
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