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‡CRYSTAL‡
誤解の種
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クルドアでの一夜が明けた。

結局、石碑を破壊した犯人の行方も掴む事が出来ず、都市の保安局も頭を悩ませていた。
また石碑の修復にも時間が掛かる様子。

ダイスはこの一連の出来事を事細かに皇帝に伝達した。
火急の用なだけに返信も早く、明け方には旅立ちの準備をする事ができた。



『今回の事件を解明すべく、首都保安局から早急に調査隊を派遣。
ヴァリアス女王一行は、引き続き巡礼の旅を続行されたし』


その通達にダイスは頭を悩ませた。
このような状況になっても尚、旅を続けろと言うのか。







そして太陽が真上へ差し掛かった頃。

身支度を済ませた一行は、次の目的地へ旅立つべく宿屋を後にした。

世話になったクルドア領主に礼を言い、飛行場に向かうべく都市の広い大通りを歩く。


ダイスを先頭にし、天上人の三人を囲うように保安隊を配置させ、大規模な列を作っていた。

ティナ達は昨日と同じようにローブを深く被り、顔を隠す。

そんな彼らを、やはり街人達は昨日と同じように疑わしげに見つめながら、ヒソヒソと小声で話し込んだ。






――昨日、街の石碑が壊されたそうよ。

――やっぱり天上人が災いをもたらしたんじゃないか?

――嫌だわ、せっかくオルガの被害が減っていたのに。

――また戦争が起こるのか…。





塵も積もれば山となる。

小声な筈の街人達の罵声も、数が増えれば嫌でも耳に入る。


シエルは無表情のまま、気にせずに歩き続ける。
ダイスやアリアも瞳を伏せ、聞こえぬ振りをしていた。

だがティナは、ぐっと唇を噛み締めて堪えていた。








戦争なんて、したくない。
私達は、貴方達に受け入れられたいのよ。

その為に、地上へ来たの。

石碑が壊れたのは、私達のせいじゃない――…





その言葉が、喉まで出かかっていた。




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