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‡CRYSTAL‡
将軍と隊長
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「――…クルドアへは後三時間足らずで着く。
それから都市フォーレ、ドール、シラクの森……。
そして最後がリュマノだ」

「…かなり広範囲な旅だ」

「仕方ないよ。“世界各地の石碑巡り”なんだから」


別室にて、机を覆い隠す程に大きく広げられた世界地図を眺めるダイスとアリア。
その領土の広さに、アリアは感嘆の声を漏らした。



「…やはり地上は広い。
我々の土地など、エクセニアの半分にも満たない」


静かに紡ぐアリアの言葉は、とても悲しそうに聞こえた。



「そもそもヴァリアスは、人間が住むには条件が悪すぎる。
…地上への移住を望む民も少なくない」

「だから平和条約を結ぼうと提案したのか…」


ようやくダイスは納得できた。

ドームに覆われたヴァリアス城内での生活には無理がある。
戦争という過去の名残が、彼らをそうさせたのだ。



「なるべく急いで終わらそう。飛行船でならそんなに時間は掛からない」

「感謝する」


アリアは丁寧に頭を下げた。
女王を守護する将軍らしい立ち振る舞い。

ダイスは小さく苦笑した。
その表情に気付いたアリアは、不思議そうに首を傾げた。



「…何か?」

「いや、ごめん。
似てないなぁと思って…――君とシエル」



その瞬間。

アリアは目を大きく見開き、凍り付いたように言葉を失った。

その一瞬の表情をダイスは見逃さなかった。



「…アリアさん?」

「いや…」


額を掌で押さえながら、後ずさるアリア。
明らかに様子がおかしい。

ダイスは試すように問い掛けた。



「…気になってたんだけど、シエルって何者なの?
護衛…にしては武器も持っていないし、外交官にしても特に動きが見られない」


名目は、和平の使者。
だが仕事は全てアリアに任せきり。

ただいつも、ティナの隣にいるだけだ。




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