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‡CRYSTAL‡
冷徹なる瞳
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門出の朝。

天気は変わらぬ快晴で、太陽の光が世界を色付ける。



「…地上は眩しいね、瞳が焼けそうだ」

「慣れれば大丈夫よ」


首都の飛行場へ向かう為に、ティナ達は城の中庭で軍の用意した車を待つ。

ダイスは直接向かうらしく、現地で落ち合う事になっている。

楽しそうに会話を交わすティナとシエル。

そんな二人姿を、アリアはただ静かに見つめていた。





「ティナ」


不意に名前を呼ばれ、振り向く。

声の主は、皇帝だった。



「へ、陛下!?何故こんな所に…っ」

「君に、渡したい物があってね。…一緒に来てくれないか?」


そう言って、皇帝は優しく微笑んだ。



「?…はい…」


ティナは一瞬だけ躊躇ったが、その表情に安心感を覚え、大人しく皇帝の後に付いていく。


そんな彼女を、シエルは冷たい表情で見つめていた。

二人の姿が見えなくなると、ようやくアリアは重い口を開く。




「――シエル」

「何…、アリア」

「あまり…近寄らないで、くれないか」


言葉を濁しながら、気まずそうに話すアリア。

シエルは瞳を細めて僅かに微笑むと、彼女の前に歩み寄った。




「…それは」


アリアの顎を持ち、顔を近付ける。






「――…ティナに近付くなって事?」

「…っ!!」



交差した瞳は、酷く冷たい白亜。

見つめられているだけで、身体の体温が奪われるような寒さを感じた。



「忘れた?二年前のあの時“あんな状態”のティナを救ったのは僕だ」

「けれど…」

「おかしな考えは捨てた方がいいよ、アリア。
平和条約は必ず締結し、ティナは必ず世界を治める」



自信に満ちたシエルの眼差しに言葉を失い、アリアは唇を噛み締めながら頷く。



「それでいい、姉さん」


満足したように彼女から手を離したシエルは妖しく口角を吊り上げた。





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あきゅろす。
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