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‡CRYSTAL‡
アリアとシエル






「…ダイス」


ティナは優しい声色で語りかける。

確かに、彼女と再び出会えた事はダイスにとって喜ばしい事だ。

なぜこんな所にいるの?
後ろの二人は誰?
今まで何をしていたの?

だがそんな質問よりも、ダイスは負傷したラダムの事で頭が一杯だった。
その事を、ティナは少なからず察している。



「怒ってる、よね」

「当たり前だろう!?」

「…ごめんなさい。
でも話を聞いて欲しい」


ティナは申し訳なさそうに俯いた。

水晶霧は相変わらず濃く、払う事を忘れていた彼らの髪や衣服にこびりつく。
気絶したラダムの怪我も手当てもしなければならない。

ダイスは冷静に判断し、怒りを鎮めた。



「…分かった、話を聞く。とりあえず一緒に政府の船まで来てくれないか?
長時間ここにいるのは危険なんだ」

「その船は首都へ行く?」

「もちろん、嫌でも連れていくよ」


ダイスの言葉に、ティナは嬉しそうな笑顔を浮かべた。



「良かった!私、エクセニア皇帝に謁見するつもりだったから!」

「…陛下に?」


彼女の言葉が気になったが、もう話す時間もない。

何せ、1時間後に船は出航してしまうのだから。

気絶したラダムを担ぎ、ダイス達は船の停泊している浅瀬へと急いだ。







「…ティナ、そちらの二人は?」


歩きながら、ダイスはふと尋ねる。
見た事のない人種なだけに、ダイスは警戒心を解けずにいたのだ。



「護衛将軍のアリアに、弟のシエルよ」

「主が世話になっていたようだな。…感謝する」

「…いえ、こちらこそ」


先程まで睨み合っていたとは思えない態度のアリア。
ダイスはちら、と後ろの三人に視線を向けた。

すると、シエルという男と視線が交わる。
彼はうっすらと笑みを浮かべた。



「よろしく、ダイス」

「…ああ」


――不思議な青年。
それがシエルの第一印象だった。




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あきゅろす。
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