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‡CRYSTAL‡
ラダムとの任務
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それから数日後。
まだ日も出ていない早朝に、エクセニア首都港から一隻の大きな船が出港した。

軍の所有する船であり、黒光りする外観が厳めしい。
船首には人魚を象った像が彫られ、これから赴く進路の先を荘厳な表情で見据えている。

そんな豪華な船の一室で、ダイスは一人気だるそうに唸っていた。



「おいおい、だらしねーなぁダイアス隊長」


机に頬杖をつき、くっと喉を鳴らして笑ったのは、5番隊長ラダム・ミハルト。
ロゼの脱退後、新たに就任した青年だった。



「寝不足で船酔いだぁ?
体調管理もできねぇ奴が島の調査なんかできんのか?」

「うるさいラダム。
…僕は君と違って忙しかったんだから」

「無理な仕事は部下に任せりゃいーんだよ」


そう言って笑うラダムを、ダイスは真っ青な顔で睨み付けた。

同じ隊長で同じだけの仕事を与えられている筈なのに、何故こんなにも違いがあるのか。

遂にダイスは室内の寝台に横たわり、頭からシーツを被ってしまった。
そして弱々しい声色で、ラダムに話し掛ける。



「…もう話はいいだろ。
到着まで寝るから出て行ってくれないか」

「はいはいっと」


厄介払いされたラダムは、面白くなさそうに部屋を出ていった。

暫くしてから、部屋に一人残ったダイスはゆっくりとシーツから顔を出す。
その眉間は皺を寄せ、酷く気分が悪そうな表情だった。



「……最悪」


いくら陛下直々の指名とは言え、まさかラダムが調査に同行するとは思わなかった。

確かに彼は強い。
だが隊長となるにはまだ歳も若く、自分の実力を過剰評価し無鉄砲になりがちだ。
おまけに言動は軽薄なものばかり。

正直な所、ロゼの後任として5番隊を仕切るには、まだまだ器が足りないのだ。

まるで子供のお守りを任せられたような気分だった。



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あきゅろす。
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