‡CRYSTAL‡ 終わらない愛(カナシミ) 肩を震わせながら俯いた顔を掌で覆うセーマ。 母親と同じ金色の瞳から、いくつもの涙が零れ落ちる。 皇帝はそっと、彼の肩を抱いた。 「――大丈夫だ、また新たな宝を探せばいい。 君はきっと歩き出せる」 子供の時だって、人前で泣いた事なんか滅多になかった。 泣く程何かに固執した事もなかった。 悲しい、苦しい、痛い。 そんな時はいつも、彼女が俺の異変に気付いてくれていた。 泣きたくなる前に、彼女が悲しい事を忘れさせてくれた。 今はもう、俺の手元に光はない。 涙を止める術を俺は知らない。 ――空が… 君のいる空が、恋しい。 ――――――――― ―――――― ――― 城の大広間では、ロゼ、ダイス、テンペストのメンバーが集っていた。 そこへセーマは静かに近付いていく。 「…セーマ!」 「話は、終わったよ」 先程とは違い、どこか吹っ切れたような表情をしているセーマ。 誰もが心配そうに表情を歪めた。 「…セーマ」 名前を呼ばれ、セーマはぴたりと立ち止まる。 涙で目元を腫らしたヒルダが、彼の前まで歩み出たからだ。 「あたし、あんたが悪くないって、ちゃんと分かってる」 セーマは黙って彼女の言葉に耳を傾けた。 するとヒルダは唇を噛み締めて、彼を見上げた。 「…でもやっぱり気が済まないの。だから… 一発殴らせなさい!」 ――もしセーマがティナを見捨てるような事があったら、殴ってやる。 それは過去に誓った、ヒルダとティナの約束だった。 「…いいよ」 するとセーマはいつものように、小さく不敵に笑う。 「な、なぁ…やめとけよ、セーマ」 「そうっすよ…ヒルダさんのビンタは殺人的――…」 カウルとモークが恐る恐る制止するが、 ――…時既に遅し。 . [前へ][次へ] [戻る] |