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‡CRYSTAL‡
本当の両親
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全てを語り終えた皇帝は、小さく溜息を漏らし俯いてしまった。

対するセーマは、何も言葉が浮かばない。

まさか、皇帝と自分の母が。




「…セーマ」


やがて皇帝に呟くように名を呼ばれ、セーマは肩を震わせた。



「この指輪は…君の母親の“形見”だそうだね」

「は…い、5年前…隕石が墜ちた時に母さんが…」

「そうか…」


形見…それは即ち、死を意味していた。



「フフ…これで分かっただろう?私がこの歳になっても、妻を娶らない理由が」

自嘲気味に力無く笑う皇帝に、セーマは瞳を細めた。



「…陛下は、まだ母さんの事を…」

「…ああ、愛しているさ。私にとって、最初で最後の女性だからね」


だが、と皇帝は付け足す。


「子孫を残さねば、私の代で王位を継ぐ者がいなくなってしまう。
そして私のたった一人の子供は…セルフィの腹の中にいた」


皇帝の言いたい事がよく分からず、セーマは黙って聞いていた。
すると皇帝は瞳を細めて、セーマを見つめる。







「セーマ…君は、セルフィの本当の息子だろう?」

「…!?」


同族の亜人は、血の繋がりなど関係なく面影が似る。

クロエは亜人が集う集落。
母もレイヤも、同じ狐の亜人だから寄り添って暮らしていただけだ。


だが、もし仮に。
セーマがセルフィの本当の子供ならば――…






「っ…俺の、父さん…?」

「私は、そうだと信じているよ」


皇帝は、にっこりと穏やかで優しい笑みを浮かべる。

セーマは動揺を隠せず、顔を俯かせた。



「ははっ、普通は驚くだろうな。君は皇子なんだぞ、セーマ?」

「…そんなの、興味ない」

「まぁ、無理に王位を継がせる気などないさ。
いきなり父親面されても、困るだろうしね。
その気があるならば、いつでも城に住んでくれて構わんよ」




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