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‡CRYSTAL‡
気高き護衛将軍





「――…地上の雄よ。
何故主は声を失った?」


ティナの姿が見えなくなった後、鎧の女は静かに問い質した。

…その偉そうな口調は百歩譲ってやるけどさ。



「“オス”って呼ぶの、やめてくれない?」

「地上の男など、そのような呼称で充分だろう。
天地戦争の際、捕虜となったヴァリアスの女がどれほど貴様らに喰われたか…」


そう言って、女は唸るように俺を睨み付けた。

どうやら天上人は、地上人を余程嫌っているらしい。

まぁ地上側も、かなり敵視してきたけど。



「俺の名はセーマ。
…それで、あんた何者?」


名前を問うと、女は真っ直ぐ俺を見据えた。



「…我が名は、アリア。
ヴァリアス王族直属の護衛将軍だ」

「将軍…どーりで。お偉い態度なわけだね」


軽く皮肉を言うと、鎧の女――アリアは眉間に皺を寄せた。

背負っていた巨大な斧をこちらに向けてくる。


「貴様、自分の身の上を理解していないようだな」

「俺を捕えるの?殺すの?
天上人って理不尽だね。
俺は来たくて此処に来たんじゃない、あんたに連れて来られたのにさ」


飄々とした俺の態度が気に入らないのか、アリアはますます眉間に青筋を立てる。

だけど次の瞬間、諦めたように武器を鞘に戻した。



「我らに危害を加えるつもりがなければ、貴様を捕える気はない」

「へぇ…優しいんだね」

「主の為だ。図に乗るな」


俺を殺せばティナが傷付くからって事かな。


――…そう、だね。

これ以上騒ぎを大きくしたら、ティナの心が本当に壊れてしまう。

まずはティナの声を戻すのが先決だ。



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あきゅろす。
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