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‡CRYSTAL‡
首都への奇襲
















――夜が来た。


激しい雨音が、感覚を鈍らせる。


嗅覚も、視覚も、聴覚も。




月の見えない、闇夜だった。





















私の唇が
一つ 嘘をついた

それは些細な
理由からで――


誰の為でもなく
ただ、愚かな自分を

守る為だったんだろう









城の高い塔の上から、雨音に紛れた歌声が聞こえる。

真夜中、雨のせいで気だるさを覚えていたセーマだったが、すぐにその歌声に反応した。



「――…憂歌?」


城での移住命令が出たセーマは、広い客間の一室で寝泊りしていた。

大きな寝台から起き上がり、懸命に聴覚を働かせる。



すると遥か遠くの方から、歌声に紛れた別の鳴き声が耳に入った。










――ガァァァアアァァァッ!!!!!!!




耳障りな、音。

忌まわしき、声。



「まさか…っ」


セーマは急いで窓を開け、外の景色を見た。

静かな夜の市街は、一変して地獄絵図のように朽ち果ててしまった。



――オルガの奇襲。


小さな村や町を荒らし渡っていたオルガの軍勢が、遂に首都を襲ったのだ。





――――――




「こちら東区!!
住宅街にオルガが出現!!
直ちに応援を頼む!!!」


「こちらは中央広場!!
Aランクと思われるオルガ出現!!
待機中のハンターは討伐へ向かえ!!」



保安局の厳戒態勢の中、首都を守るハンター群は直ちに出動した。

その数は、ドールの比ではない。

建物を破壊し、街に火を放ち、逃げ惑う市民を次々と襲ってゆく。





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あきゅろす。
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